『完璧な病室』小川洋子2021-04-19

2021-04-19 當山日出夫(とうやまひでお)

完璧な病室

小川洋子.『完璧な病室』(中公文庫).中央公論新社.2004
https://www.chuko.co.jp/bunko/2004/11/204443.html

続きである。
やまもも書斎記 2021年4月12日
『夜明けの縁をさ迷う人々』小川洋子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/04/12/9366470

小川洋子の作品を適当にみつくろいながら読んでいって……たまたま、この本が小川洋子のデビュー作品集ということになった。

収録してあるのは、次の作品。

完璧な病室
揚羽蝶が壊れる時
冷めない紅茶
ダイヴィング・プール

『完璧な病室』(1989.福武書店)と、『冷めない紅茶』(1990.福武書店)を、合わせて文庫にして一冊に再編集したものである。

この作品集にあるのは、不思議な透明感であるといっていいだろう。

描かれている題材としては、病気であり、死であり、老いであり、介護であり……あまり人生の明るい側面を描いているとはいえない。しかし、暗さや陰惨なイメージはほとんどない。どれもさらりと書いてある。

その場にいる人間としては、社会的にみても、深刻な問題なのかもしれないが、それを、人間の奥底にとどくようなまなざしで見つめながら、同時に、透明感のある作品となっている。これが、小川洋子という作家の出発点なのかなと思って読んだところである。

リアリズムの小説のように見えて、そこをかろやかにかわしている。だが、そこには、人間を見る透徹した目がある。いずれも深刻な人生の問題をあつかっていながら、清涼感のある読後感である。

今、小川洋子を読みながら平行して、山田風太郎の明治小説を読んでいる。本は買って書斎に積んである。適宜、順番に読んでいくことにしたい。

2021年4月12日記

追記 2021-04-26
この続きは、
やまもも書斎記 2021年4月26日
『シュガータイム』小川洋子
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/04/26/9370993

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