「調査報道 新世紀File7 気候変動対策の“死角”」2024-12-13

2024年12月13日 當山日出夫

NHKスペシャル 調査報道 新世紀File7 気候変動対策の“死角”

番組で主張したいことは分かるのだが、今ひとつどうかなと思うところがないではない。

まず、番組の始めで、人工衛星からの観測で、地球上でメタンがどこから排出されているのか示されていた。映った地図を見ると、圧倒的に、中国、ロシア、中央アジア、東南アジア、というあたりが、巨大な排出源ということになるようだ。(この画面をゆっくりと見せるということはなかったが、しかし、隠すということでもなかった。)

その中で、取材していたのはアメリカの事例。たしかにアメリカのことが、NHKとしては、もっとも取材しやすい、ということはあるにちがいない。だが、こここで、アメリカの事例だけをとりあげて、メタンの排出を抑制しても、その他の地域がどうなのかということが、問題として残ることになる。そして、残った地域は、そう簡単に排出の抑制が可能な地域とは思えない。

このあたりのことは、番組を見た人が、察してくれということなのかとも思うが、どうなのだろうか。

カーボンクレジットは、これで本当にCO2の排出量が減らせるかどうかは、眉唾ものである。見かけ上のことにすぎないとしかいいようがないだろう。カーボンクレジットという仕組みがあってもなくても、森林破壊はくいとめなければならないものである。強いていえば、カーボンクレジットでお墨付きを与えたところ以外は、森林伐採をやってもいい……かなり、批判的に見ればこのように考えることもできる。

しかし、だからといって、何もしないよりはマシであることも確かであり、より現実的なこころみとして、推進されるべきことでもある。無論、このときに、ごまかしなどはあってはならないが。

このての番組で、無条件に前提としていることは、あるいは、まったく考えていないことは、未来社会に対して、現代の我々がどのような倫理的な責任があり、それをどう解決することが妥当なのか、それは、地球上の人間や国家が、どのように負担すべきことなのか、そのとき、制限される権利があるとしたならば、それはどのようなことなのか……というようなことがらについての、根本的で論理的な問いかけである。

具体的には、グローバルサウスの国々に対して経済発展をあきらめろ、アメリカのラストベルトの人びとに対して今のままで我慢しろ……と言えるのだろうか。

とはいえ、日本としてできる限りのことを努力することに異存はないし、それで、少しぐらい生活が不便になってもいたしかたのないことだとは思うのであるが。

2024年12月9日記

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2024/12/13/9739311/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。