「いちげき」2023-01-06

2023年1月6日 當山日出夫

NHK いちげき

今年のNHKのお正月の時代劇ドラマである。脚本は宮藤官九郎。新しいテイストの時代劇であるといえる。

エンタテイメントとしてよくできている。荒唐無稽な物語である。だが、そうはいっても、その根底にある、歴史観というようなものもある。これが、ある意味で新鮮である。

大きくは、百姓が武士になる物語である。ただ、時代としては幕末。慶應三年の終わり。大政奉還があって、明治維新になろうかという時である。明治維新の結果、武士の時代は終わるということになる。(その結果が、四民平等であったかどうかは、また別の問題だが。)

百姓が武士になる物語としては、例えば新撰組の話しもそうかもしれない。

エンタテイメントとして作ってあるからこそ、そこに描かれる武士のイメージ、百姓のイメージというものが、気にかかる。今の歴史学では、江戸時代の身分制度について、そんなに厳格な上下関係、支配・被支配の関係を強く考えないのかとも思う。また、武士に対比されるのが、百姓というのも、ある意味ではステレオタイプなイメージではある。

ドラマでは、最終的に、武士の身分というものを軽やかに超えていく展開になっている。とはいえ、単なるヒューマニズムでもない。武士とか百姓とかという身分制度を超える視点に立とうとしていると言っていいだろうか。この意味では、新しい時代の時代劇と言えるだろう。

伊藤沙莉が良かった。それから、神田伯山の語りも良かった。

まさに幕末という時代を選んだからこそ作ることのできた、新しい時代劇である。

2023年1月5日記