ドキュメント72時間「美術大学 青春グラフィティー」2023-01-09

2023年1月9日 當山日出夫

ドキュメント72時間 美術大学 青春グラフィティー
https://www.nhk.jp/p/72hours/ts/W3W8WRN8M3/episode/te/NGRQMG7ZPZ/

この番組は、時々見る。去年は、毎回録画しておいてそのほとんどを見たかと思う。年末になると、その年のベストテンを見る。昨年の夏には、歴代ベストテンがあった。これは面白かった。

この回は、武蔵野美大の芸術祭のこと。青春グラフィティーものと言っていいだろう。(このようなものとしては、歴代ベストテンに入った、北大の学生寮を思い出す。)

興味深いことがいくつかある。

美大、芸大というところは、謎である。一般の大学からすると、いったいここはどんなところかよく分からない。

武蔵野美大の場合、六割ほどの学生が就職するという。これは、そうなのかと思うところがあった。美大を出たからといってアーティストになるわけではないだろう。学んだことを生かすにせよ、会社勤めというのが妥当な生き方かなと思ってしまう。ただ、気になるのは、就職しない残りの学生である。アーティストとして自立できるのは、たぶんほんのわずかかと思われる。残りはどうなるのだろうか。まあ、最悪の場合、卒業後は行方不明というあたりかもしれない。だが、それはそれなりに人生を歩んで行くにちがいないとは思う。

見ていて良かったのは、教員が登場していないことだった。何を学び、何を考えるかを、あくまでも学生の視点で描いていた。このような場合、えてして大学側の意図として、何を教育したいか、どのような人材となることを求めているか、大学側の教育理念のようなものが出てしまいがちかもしれない。それが、無かったのはそのような方針で作った番組ということなのだろうと思う。

それにしても、美大で学んでいながら、奨学金の返済のために就職を考えなければならないとは、せちがらい世の中であると思う。

昨今の御時世にあっては、美大など「不要不急」の最たるものかもしれない。充実した大学生活、悩むことはあるかもしれないが……このようなことを感じた番組であった。

2023年1月7日記