「探偵ロマンス」(一)2023-01-27

2023年1月27日 當山日出夫

探偵ロマンス(一)
https://www.nhk.jp/p/ts/MZJR2NR6JM/episode/te/7KYP692V1L/

先週の土曜日(一月二一日)の放送。録画しておいて、後日にゆっくりと見た。

NHKの大阪(BK)で作った、エンタテイメントドラマ。若き日の江戸川乱歩が出てくる。朝ドラの「カムカム」の制作チームで作ったとある。なるほどという出来映えである。

江戸川乱歩は、今でも読まれている作家と言っていいだろう。私の子供のころは、少年探偵団、怪人二十面相など、見たのを覚えている。その後しばらく下火になったと言っていいのかもしれない。それが、高校生の頃だったろうか、たしか角川文庫版でいくつかの作品が刊行になったかと記憶している。同じように横溝正史も、文庫本でそのころ復活したのを読んだものである。『八つ墓村』『獄門島』など主な作品は、高校生のころに読んだ。

乱歩については、大衆小説家と言っていいと思う。純然たる文学とは違う。エンタテイメントである。が、これは悪い意味で言っているのではない。純然たるエンタテイメント小説というものが、あるいは近年では少なくなってしまったかもしれない。

ドラマであるが、これは、まさにエンタテイメントとして作ってある。たぶん、大正時代ごろの東京……いやこのドラマでは帝都と言った方がいいだろうか……が舞台なのだろうが、時代とか場所は特定して作っていない。どこか謎めいていて、しかし一方で、あの時代ならさもありなんという雰囲気、この虚と実のバランスが実にいい。まったく荒唐無稽のフィクションではないという印象がある。江戸川乱歩という実在の作家を登場させている。しかし、それを取り巻く設定は、虚実入り交じった幻想的な歴史の世界である。

そして、アクションシーンがいい。草刈正雄がこんなに躍動的な役者だったのかと改めて思ったところがある。

ところで、小説の読者であり、学校の先生をしているらしい女性……石橋静河……は、いったい何者なのだろう。事件の犯人も気になるが、この女性の正体も気になる。

NHKらしいすぐれた娯楽作品に仕上がっていると思う。次も見ることにしよう。

2023年1月24日記