『殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安』池波正太郎/講談社文庫2023-01-14

2023年1月14日 當山日出夫

殺しの四人

池波正太郎.『新装版 殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安 (一)』(講談社文庫).講談社.2001
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000202195

この小説(書籍)が出たのが、昭和四八年(一九七三)ということのようだ。あとがきによる。となると、テレビの「必殺仕掛人」がはじまったのは、ほぼ同時期のことということになる。テレビ版では、梅安シリーズは、最初の一作だけで、後は中村主水などに変わっていったと覚えている。

つまり雑誌連載のときから、テレビの企画がスタートしたと言っていいのかもしれない。(このあたりは、テレビの歴史ということで、興味深いところではある。)

私は、テレビ版の「必殺仕掛人」は初回から見た記憶がある。藤枝梅安は、緒形拳だった。それから、林与一が出ていた。そのせいか、私の中の梅安というと、緒形拳のイメージが非常に強い。

小説版(文庫)を読んだのは、学生のときだったかと思う。読んでみて、記憶にあるテレビの印象とかなり違うので、ややとまどったという印象がある。

池波正太郎の作品を読んでおきたくなって、手にした。今年(二〇二三)は、池波正太郎の生誕一〇〇年になる。「仕掛人」も映画になるらしい。(といっても、映画は見ない生活を送っているので、見に行くということはないと思うが。)

今の時点から、この作品、仕掛人シリーズの一冊目になるが、これを読んで思うところとしては、時代小説としてちょっと古いかなという感じがしなくもない。その一方で、「仕掛人」というものを創造したということでは、画期的な作品と評価することもできよう。これは、むしろその後のテレビドラマの分野で引き継がれ発展していくことになる。

おそらく戦後の大衆小説、時代小説という分野において、池波正太郎の業績は多大なものがあるだろう。たぶん、仕掛人のドラマや映画は、これからも作られていくだろうし、小説も読まれ続けていくことと思う。

また、どうでもいいことのようだが、この本でもいくつか魅力的な食べ物が出てくる。そんなに高価なものではない。安直な料理が多いのだが、しかし、実にうまそうである。これも、池波正太郎の作品を読む楽しみの一つと言ってよい。

2023年1月5日記