『あ・うん』「(3)「青りんご」」2025-02-04

2025年2月4日 當山日出夫

『あ・うん』 (3)「青りんご」

一九八〇年のドラマなのだが、やはりこれは向田邦子の作品ということで見ることになる。今の時代だったら、このドラマに描かれたような、友情とか、夫婦の関係とか、親子の関係とか……これらを、とても題材にできないだろう。一九八〇年(昭和五五年)のときには、このドラマの登場人物や設定に理解があり、共感する視聴者が多くいた。現在、そのような人がまったくいなくなったというわけではないが(現に、私はこの再放送を見ている)、このような筋立てのドラマを書ける脚本家は、もういないだろう。

現代の価値観からすると到底容認できないような、家庭のあり方だったり、夫婦関係だったりする。水田と門倉の友情も、どのようなきっかけがあれば、こんな人間関係が構築できるのか、想像することも難しいだろう。いや、ドラマが放送された一九八〇年の当時でも、かなり特殊な関係と思われていたにちがいない。だが、その無理なところを、ドラマに仕立ててみせるのが、向田邦子のうまいところ、ということになる。

そうはいっても、見ていると、こういう人間の気持ちもわかる気がする……という気になる。誰も悪い人は出てこない。山師のおじいちゃんも、悪い人手はない。みんなが、お互いの気持ちを分かるようでいて、本当のところは若いあえていない、しかし、だからといって孤独(近代的な意味での)ということでもない。

ところで、水田千吉は夜学の出である。これが、会社勤めをするなかで、コンプレックスになっていた時代があった。これも、過去のことである。門倉には二号がいるが、これを悪徳としては描いていない。まだこの時代には、こういうことに社会全体としておおらかであった。(今は、とてもこうはいかない。)

2025年1月30日記

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