『巨匠の傑作パズルベスト100』 ― 2008-03-20
2008/03/20 當山日出夫
伴田良輔.『巨匠の傑作パズルベスト100』(文春新書).文藝春秋.2008
パズル関係の本はいくつか持っているが、なんとなく買ってしまった。この本、掲載されているパズルよりも、その問題を誰が作って、どんなメディアで発表し、どんな人たちがそれを解いていたのか……いわば、近代のパズル史として読めるだけの、解説が記してある。問題そのものよりも、この解説を読むことのためにだけでも、この本の価値はあると思う。
パズルといえば、まず、思い浮かぶのが、サム・ロイド、や、ヘンリー・アーネスト・デュードニーである。これらのパズルが発表されたメディアが、近代(19世紀以降)の、新聞・雑誌メディアである、ということは、かなり重要なことだと思う。
いったい誰が、パズルを解くなどという、きわめて「非生産的」な時間の使い方を思いついたのだろう。少なくとも、パズルには、中世のイメージはない。近代市民社会、にどうしてもむすびつく。
ところで、パズル作家デュードニーが、その作品を発表したメディアが、『ストランド・マガジン』。これはいうまでもなく、コナン・ドイルが、シャーロック・ホームズを発表した雑誌でもある。
パズル、あるいは、探偵小説(というのがこの場合いいだろう)の、クライアントは、どんな人々であったのか。このような視点から、「技術」「科学」「芸術」といったことがらについて考えるのも、一つの方向だろう。この時代こそ、「技術」「科学」「芸術」が、それぞれに、分離融合した時代でもあるのだから。
余計なことながら、上述の本、解説を読んだだけで、問題は解いているだけの時間の余裕がないのが、残念としかいいようがない。そろそろ、次年度の授業の準備をはじめないといけないし。
その前に、(私個人としては)毎年の行事である京大の「東洋学へのコンピュータ利用」セミナーを終えないといけない。今年は、去年に引き続き、発表である。その報告などは、おって後ほど。
當山日出夫(とうやまひでお)
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