『光る君へ』「はばたき」 ― 2024-11-25
2024年11月25日 當山日出夫
『光る君へ』「はばたき」
まひろ/藤式部は、「源氏の物語」を書き終える。まだこのドラマのなかでは『源氏物語』という固有名の作品として呼ばれていない。だが、作品としては、宇治十帖を書き終えたことになっている。
ただ、不満に思うことがある。それは、『源氏物語』の「若菜」の巻のこと、不義密通のこと、それから「宇治十帖」における、その次の世代の人たちのこと、これらのことが、どのような内容であり、それを書いたまひろ/藤式部は何を考えたのか、何を思ったのか、ここのところがほとんど描かれていないことである。
また、『源氏物語』の終わりは、確かに番組のなかで出てきたとおりなのだが、私が読んで感じたこととしては、いかにも唐突な終わり方という印象もあり、また、なるほどこのような終わり方でいいのだな、と感じるところもある。昔、若いときに読んだときには、なんとなくこんな終わり方でいいのだろうかと思ったものだが、このごろでは、『源氏物語』を読んできて、ああこういうことで終わるのが自然だなと感じるようになった。
『往生要集』が出てきていたが、まひろならこれを読むことができただろう。『源氏物語』における浄土思想ということは、研究のあるところだと思っている。
娘の賢子が女房として出仕することになる。大弐三位であるが、すぐにこの名前で呼ばれるようになったわけではない。このドラマでは、賢子のこれからのことをどれぐらい描くことになるのだろうか。
賢子は、働く女性となる。平安時代の貴族層の女性にとって、女房として出仕することは、働いて家の家計をささえるためだったのだろうか。
紫式部と大弐三位、母と娘がそろって女房装束(十二単)でならんでいる姿は、このドラマならではものであろう。
まひろは賢子に、これが「源氏の物語」と言って積み重ねた紙を渡すシーンがあったが、はたして『源氏物語』は、どのような紙に書かれ書物になって流布したのだろうか。パラパラの紙を積み重ねただけ、というのはどうなのだろうかと思うところでもある。積み重ねた紙をお盆にいれて運んでいたけれど、もし袴のすそをふんづけたりして転んだりしたら、どうするのだろう。床にバラバラになってしまって、収集がつかなくなるにちがいない。
賢子は道長の子であると、まひろは道長につげる。そして、道長は賢子のことを、これが自分とまひろとの娘なのかという思いで見ることになる。
まひろは、心の闇を書いたと言っていた。だから、『枕草子』のようにきらびやかな道長のことは書けないと。たしかに『源氏物語』特に、「若菜」以降から宇治十帖は、人間のこころの奥深いところを描いている。このような物語を書き終えたまひろとしては、それから何をすることになるのか。このドラマでは、決意して旅に出るということになっている。(本当はどうだったかは分からない。が、ここは、このドラマとしての作り方である。)
道長のことを物語として書いてほしいと、倫子が頼んだ相手は、赤染衛門だった。たぶんこれが『栄華物語』ということになるのだろう。これは、古い古典大系にはいっている。
道長は出家する。これは現世がいやになった、賴通にまかせたい、いろんな事情があってのことのようである。強いていえば、望月の歌を読んで、権力の絶頂に立ったことを自覚して、これからは衰えていくのである……という諦観のようなものもあったかと感じる。
出家のシーンがあったが、はたして平安時代の貴族の出家は実際にどのようなふうにしていたのか、気になるところではある。かなりリアルに作ってあったという印象である。
人の一生はあっけないものであると道長は言っていた。いろいろあったドラマなのだが、最終的にはこういうところに落ち着くのだろう。人間とはこんなものかと思う。
まひろは旅に出る。お供は乙丸である。須磨、明石ぐらいなら、京都から歩いていけなくもないだろうが、足もとを見ると、サンダル履きというようだったのだが、これで無事に行くことができたのだろうか。昔は、須磨の海岸も、人がいなくて広々としたものだったかもしれない。
太宰府には船で行ったのだろう。これは、『源氏物語』で玉鬘の旅の逆ということになる。おそらく平安時代の太宰府は、日本と宋との交易がおこなわれていたことは確かなことだろうが、実際はどうだったのだろうか。市場で中国語がとびかうような状況だったのだろうか。
倫子は猫を抱いていたが、このドラマのなかでは何匹目になるだろうか。
次週、刀伊の入寇になるようだ。まひろは、この事件を目撃することになるのだろうあ。
2024年11月24日記
『光る君へ』「はばたき」
まひろ/藤式部は、「源氏の物語」を書き終える。まだこのドラマのなかでは『源氏物語』という固有名の作品として呼ばれていない。だが、作品としては、宇治十帖を書き終えたことになっている。
ただ、不満に思うことがある。それは、『源氏物語』の「若菜」の巻のこと、不義密通のこと、それから「宇治十帖」における、その次の世代の人たちのこと、これらのことが、どのような内容であり、それを書いたまひろ/藤式部は何を考えたのか、何を思ったのか、ここのところがほとんど描かれていないことである。
また、『源氏物語』の終わりは、確かに番組のなかで出てきたとおりなのだが、私が読んで感じたこととしては、いかにも唐突な終わり方という印象もあり、また、なるほどこのような終わり方でいいのだな、と感じるところもある。昔、若いときに読んだときには、なんとなくこんな終わり方でいいのだろうかと思ったものだが、このごろでは、『源氏物語』を読んできて、ああこういうことで終わるのが自然だなと感じるようになった。
『往生要集』が出てきていたが、まひろならこれを読むことができただろう。『源氏物語』における浄土思想ということは、研究のあるところだと思っている。
娘の賢子が女房として出仕することになる。大弐三位であるが、すぐにこの名前で呼ばれるようになったわけではない。このドラマでは、賢子のこれからのことをどれぐらい描くことになるのだろうか。
賢子は、働く女性となる。平安時代の貴族層の女性にとって、女房として出仕することは、働いて家の家計をささえるためだったのだろうか。
紫式部と大弐三位、母と娘がそろって女房装束(十二単)でならんでいる姿は、このドラマならではものであろう。
まひろは賢子に、これが「源氏の物語」と言って積み重ねた紙を渡すシーンがあったが、はたして『源氏物語』は、どのような紙に書かれ書物になって流布したのだろうか。パラパラの紙を積み重ねただけ、というのはどうなのだろうかと思うところでもある。積み重ねた紙をお盆にいれて運んでいたけれど、もし袴のすそをふんづけたりして転んだりしたら、どうするのだろう。床にバラバラになってしまって、収集がつかなくなるにちがいない。
賢子は道長の子であると、まひろは道長につげる。そして、道長は賢子のことを、これが自分とまひろとの娘なのかという思いで見ることになる。
まひろは、心の闇を書いたと言っていた。だから、『枕草子』のようにきらびやかな道長のことは書けないと。たしかに『源氏物語』特に、「若菜」以降から宇治十帖は、人間のこころの奥深いところを描いている。このような物語を書き終えたまひろとしては、それから何をすることになるのか。このドラマでは、決意して旅に出るということになっている。(本当はどうだったかは分からない。が、ここは、このドラマとしての作り方である。)
道長のことを物語として書いてほしいと、倫子が頼んだ相手は、赤染衛門だった。たぶんこれが『栄華物語』ということになるのだろう。これは、古い古典大系にはいっている。
道長は出家する。これは現世がいやになった、賴通にまかせたい、いろんな事情があってのことのようである。強いていえば、望月の歌を読んで、権力の絶頂に立ったことを自覚して、これからは衰えていくのである……という諦観のようなものもあったかと感じる。
出家のシーンがあったが、はたして平安時代の貴族の出家は実際にどのようなふうにしていたのか、気になるところではある。かなりリアルに作ってあったという印象である。
人の一生はあっけないものであると道長は言っていた。いろいろあったドラマなのだが、最終的にはこういうところに落ち着くのだろう。人間とはこんなものかと思う。
まひろは旅に出る。お供は乙丸である。須磨、明石ぐらいなら、京都から歩いていけなくもないだろうが、足もとを見ると、サンダル履きというようだったのだが、これで無事に行くことができたのだろうか。昔は、須磨の海岸も、人がいなくて広々としたものだったかもしれない。
太宰府には船で行ったのだろう。これは、『源氏物語』で玉鬘の旅の逆ということになる。おそらく平安時代の太宰府は、日本と宋との交易がおこなわれていたことは確かなことだろうが、実際はどうだったのだろうか。市場で中国語がとびかうような状況だったのだろうか。
倫子は猫を抱いていたが、このドラマのなかでは何匹目になるだろうか。
次週、刀伊の入寇になるようだ。まひろは、この事件を目撃することになるのだろうあ。
2024年11月24日記
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