「最古の巨石遺跡が語る文明の起源」2024-12-18

2024年12月18日 當山日出夫

フロンティア 最古の巨石遺跡が語る文明の起源

まず番組の中で言っていなかったことが気になる。このトルコの遺跡は、チグリス・ユーフラテス古代文明などの、周辺の古代文明とかかわりがあるのか、ないのか、ということである。それを考古学として、さらには人類の歴史として、証明することができるとすれば、もっと発掘が進んでからのことになるにちがいない。

狩猟採集民から定住農耕民への変化というのが、これまでの世界史、人類史のおおきな流れとして理解されてきたわけだが、それに見直しをせまることになる。農耕をしない狩猟採集民が定住して、巨大な石の文明をきずいたことになる。

全体としての流れは、移動する狩猟採集から、定住の農耕へということになるかと思うが、しかし、人類の歴史としては、移動する人びとというのは、その後の歴史を通じていたことはたしかである。そのなりわいが、狩猟採集から、商業への変化はあったにはちがいないが、人間が定住することだけが、人間の文化や文明ではない、という認識も必要なことかもしれない。

近代になってからの政治思想、特に社会契約説の基本にある考え方として、原初状態にある人間ということを考えている、ということは常識的なことかと思う。このとき、原始的な段階の人間の生活としてイメージするのが、その当時の西欧に知られていた、アメリカインディアン(このことばは今ではつかわないことばになっているが)であり、アフリカの原住民(このような言い方も今ではしないが)であったことは、言われていることだろう。

そして、このような人びとの生活についての認識が、考古学的なむかしの人びとの生活がどんなであったかというところに、投影されることになる……このように考えているのだが、どうだろうか。学問史としても、考古学や文化人類学などの研究は、古くは人類学というような大きなくくりのなかにあったと認識している。

農耕、植物の栽培の起源ということと、狩猟採集の時代に、古代の人びとが自然にある植物をどのようにして収穫して食べていたのか、ということは違うことになるのかと思う。このあたり、考古学や文化人類学などの分野では、どのように考えられているのだろうか。大きくは、人間は何をどのようにして食べてきたのかということの歴史になる。

小麦があれば、あんなに簡単にビールが作れるものかと、驚いた。(どうでもいいことだが、これまでの経験上、考古学者と一緒に酒は飲まない方がいい。たしかに、とても豪快であるのだが。)

番組を見て思ったことの一つに、むかしむかしの人びとは平等であったが、集団で組織を作って生活するようになると、階級分化がはじまり、富と権力が集中することになり、巨大な建造物が生まれる……このような理解は、半分はそうだろうなあと思うが、もうすこし違う考え方はできないものかとも、思うことになる。人類の歴史の大きなステップであり、謎である。原始共産制というようなことを信じている人はもうあまりいないとは思うのだけれど。(その他には、言語の成立とか、宗教の成立とか、ということがある。)

遺跡からは人骨が発見されていた。当然ながら、DNA鑑定することになるだろう。地球全体としての人類の歴史を考えることができるようになっている、と理解していいだろう。その全体像が見えるようになるには、まだ時間がかかるかもしれないが。

古代遺跡において、人間をどう表現するかという問題は興味深い。抽象的な表現から具体的な表現になったことで、人間を中心とした世界観に変わってきた、ということだったが、どうなのだろうか。このことの延長としては、日本における、土偶や埴輪など……これは最近になって話題のテーマであるが……を、どう考えるかということとも関連することだろう。

それからどうでもいいことだが、考古学という研究分野においては、その遺跡を誰が掘ることになるのか、その利権とまではいわないが、縄張り意識というか、仲間内の仁義というか、このようなことはあるのだろうと思う。(私のかかわってきた、日本の古典籍の研究の分野でも、それに近いようなことがないとはいえない。)

2024年12月15日記

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