『ヴェネツィア便り』北村薫2020-12-19

2020-12-19 當山日出夫(とうやまひでお)

ヴェネツィア便り

北村薫.『ヴェネツィア便り』(新潮文庫).新潮社.2020(新潮社.2017)
https://www.shinchosha.co.jp/book/406613/

北村薫は、まだ覆面作家としてミステリを書いていたころからの読者である。東京創元社から出た本のほとんどは買っていたと思う。私と円紫師匠のシリーズである。

だいたいどんな人物であるかは予想していた。たぶん、年齢は私とほぼ同じぐらいだろう。若いころより、文学とミステリ(いや、探偵小説といった方がいいかもしれない)を多く読んでいる。おそらく、大学は早稲田だろう。

このような予想はほぼあたっていたことになる。その北村薫の文庫本としては一番新しいものである。出たときに買って、しばらくおいてあった。(ここしばらくの間、太宰治を集中的に読んでいたこともある。)

相変わらず、北村薫は、小説がたくみである。特に、女性の心理を描くのうまい。(これは、おそらく女性の読者であっても、同意してくれるのではないかと思っている。)

この本は、短篇集であるが、どの作品もこころに残る。なかでも、タイトルになっている、「ヴェネツィア便り」がいい。女性の書簡文という体裁であるが、情感にとんでいる。また、ひとが生きてとしをとっていくということが、しみじと描かれている。

北村薫の本は、他にも未読の作品がいくつかある。これから、ぼちぼちと読んで、あるいは、読みなおしてみたいと思う作家の一人である。

2020年12月18日記