100分de名著「司馬遼太郎“覇王の家” (1)「三河かたぎ」が生んだ能力」2023-08-09

2023年8月9日 當山日出夫

100分de名著 司馬遼太郎“覇王の家” (1)「三河かたぎ」が生んだ能力

この100分de名著でこれまで司馬遼太郎を取りあげてきていないというのも、改めて驚きと言っていいだろうか。が、その作品のなかから何を選ぶかとなると難しいだろう。この意味では、今年、大河ドラマで『どうする家康』をやっているにあわせて『覇王の家』を持って来るというのは、いいアイデアだと思う。

私は、『覇王の家』は読んでいない。司馬遼太郎の主な歴史小説は読んだつもりでいるが、これは未読である。『坂の上の雲』『翔ぶが如く』は二回読んだ。司馬遼太郎の作品は、新聞連載が多い。そのため、細切れに読んでもなんとかついていける。若いときは、出かけて電車の中で読む本と決めて司馬遼太郎を呼んでいた。『坂の上の雲』もほとんど電車の中で読んだと憶えている。

人間史観という。言われてみればなるほどそうである。司馬遼太郎に限らずであるが、歴史小説は、あくまでも人間を描くものだと思っている。この観点からするならば、唯物史観とは相容れない。そして、司馬遼太郎が歴史小説家として活躍していたころは、まさに歴史学において、唯物史観が全盛期であったともいえようか。

それについていけない、あるいは、不満を持つような多くの読者にとって、司馬遼太郎は、歓迎される作家であったことになる。また、その歴史小説のなかでなされる、文明論的な講釈が、また人を引きつけることになった。(現代では、むしろ、その余計な部分がある意味では煩わしいと感じるところもあるかもしれない。)

この回で語られていたことのキーワードとしては、三河ということと、中世的情念、ということになるだろうか。えてして司馬遼太郎は、登場人物を類型化してあつかう。この類型化の小説作法になじむ読者にとっては、非常に面白く読めるということでもある。

歴史を語ることと、文学を語ることのあいだに、歴史小説を読む楽しみがあるというべきだろうか。

2023年8月8日記

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2023/08/09/9608413/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。