ドキュメント72時間「福島 真冬のアイスクリーム店で」2024-03-12

2024年3月12日 當山日出夫

ドキュメント72時間 福島 真冬のアイスクリーム店で

アイスクリームは、ここ十年以上は食べたことがないと思う。別に嫌いということではない。ただ、なんとなく食べずに来ているだけである。まあ、私の場合、特にこれが食べたいということがあまりない方なのかもしれないが。

牧場の副業として始めたアイスクリーム屋さんらしいのだが、はたしてもうかっているのだろうか、ちょっと気になる。駐車場は広いが、そんなにひきもきらずにお客さんが来るという店でもないようだ。だが、近くに住む人で常連のお客さんはかなりいるらしい。

特に劇的な人生を送っているという人が出てくるのではない。福島の普通の地方都市の郊外の店である。二〇一一年の震災のことは記憶に残ってはいるが、今では、普通の生活を送っている。これを幸せと言っていいのだろうと思う。

地域としては、過疎高齢化の進むところだろうと思ってみるのだが、今のところ、生活に支障があるということはないようだ。今の日本のごく普通の地方の生活がそこにはあるといえるだろう。

ひとつのアイスクリームで幸せを感じることのできる人びとがいる。そして、それを見る人も幸せを感じる。これでいいのだと思う。

当たり前の普通の生活の一端をかいまみることができる。あるいは、もっと深く追求していくならば、深刻な人生の懊悩をかかえた人もいたのかもしれない。しかし、そこまで踏み込まないところが、この番組のいいところである。

2024年3月9日記

「アウシュビッツに潜入した男」2024-03-12

2024年3月12日 當山日出夫

BS世界のドキュメンタリー アウシュビッツに潜入した男

二〇二二年、フランスの制作。

アウシュビッツというと、ユダヤ人の虐殺のイメージがある。特に地面に無造作に積み上げられた死体の山の映像が記憶にある。

だが、アウシュビッツは、ユダヤ人以外にもポーランド人やスラブ人など、ナチスからすれば劣等とされた人びとを収容し最終的には抹殺するための施設であった。この番組では、ここで何がおこなわれているのか、潜入して調査した人物、ピレツキーの行動を追っている。ポーランドにこのような働きをした人間がいたということは、この番組で知った。

ただ、いろいろと考えるところはある。アウシュビッツに収容されている人びとの内部においても、裏切り者(ナチスへと通じている)がいるのではないかと猜疑の目がある。場合によっては、密かに処刑されることもあった。(番組では厳正に調査した上でということではあったが。)

抵抗組織の内部における粛正ということは、歴史的に見ればさしてめずらしいことではないと言える。が、これがアウシュビッツに収容されていた人びとのなかにおいても行われていたということは、ちょっと考えるところがある。人間とは、そのようなものであるのかと思う。

また、冒頭でさりげなく触れていたことだが、ナチスにとっての民族の序列の認識。トップにくるのはアーリア人である。そして、スラブ人、アジア人、黒人などが劣位になり、ユダヤ人はさらにその下に位置づけられる。ナチスは、同盟関係にあった日本と日本人のことをどう思っていたのだろうか。このようなことは、日本の報道などではあまり出てこない。NHKの「映像の世紀」でナチスやユダヤ人のことは度々あつかわれるが、その人種観の実態とでもいうべきものにまで言及することはない。私は読んでいないのだが、『我が闘争』における人種についての記述は知られていることだと思う。

見終わってから検索してみたのだが、番組で映っていたのは、今も残されている収容所の姿であるらしい。こういうものをきちんと残しておくということの意義もまた考えることになる。この現在のアウシュビッツの様子はあまりテレビで見ることがないように思う。第二次世界大戦中のこととか、それが終わって解放された直後の様子などは、幾たびか見ているのだが、現在どうなっているかはあまり伝えられることがないようである。どのように保存されているのか、そのあり方についても、報じられる必要があるかと思う。

2024年3月6日記