読字障害2009-04-02

2009/04/02 當山日出夫

『病の起源 2-読字障害・糖尿病・アレルギー』.NHK「病の起源」取材班(編著).NHK出版.2009

新聞の広告をみていても、「字」という字が目にとまると、必ず見る。最近、目についたのは、「読字障害」ということば。さっそく買って読んでみた。

結論からいえば、現時点において、「文字」について語ろうとするとき、必読といってよい。

「言語」の能力については、(いろいろ意見や立場はあっても)人間にとって、生得的なものである、ということについては、もはや、言語研究の了解事項であるだろう。特に「障害」が無い限りは、「母語」は自然と身につける。逆に、「母語」を習得できない場合、そこ人は、なんらかの「障害」がある。そして、それは、「脳」の機能にいきつく。おおまかな流れとして、このように考えることに、大方の言語研究者の同意は得られるだろう。

では、「文字」については、どうか。

学習(小学校)の段階において、文字の読み書きが苦手、という人がいる。その割合は、「アメリカやイギリスでは10人に1人、日本では20人に1人が読字障害の可能性があると言われている」(p.8)

字の読み書きが苦手、読字障害=ディスレクシア(Dyslexia)、であっても、(あるいは、そうであるがゆえに)非常に高い能力を発揮する人も多い。たとえば、紹介の本でメインに登場するのが、恐竜研究者である、ジャック・ホーナー教授(アメリカ)。日本人では、天才的な建築家である藤堂高直さん。歴史的人文としては、パブロ・ピカソ、ヘンリー・フォード、ウォルト・ディズニー、グラハム・ベル、など。

「言語(音声言語)」は、それが何時のことかは確定できないにしても、人類の進化の過程で、獲得した能力であることは確か。脳の機能としても、言語(音声言語)をあつかう領域は特定されている。

だが、文字を脳で処理する機能は、人類の発達史からすれば、ほんの数千年前にさかのぼるのみ。さらに、それが「リテラシ」として、近代社会の人間に要求されるようになってから、100年ぐらいしかたっていない。

このことは、文字を人間がどのように言語として認識するのか、脳科学において明らかになる。左脳の39野と40野のはたらきによる。強いていえば、無理にこのところを使っている。

京都大学・福山秀直教授の談
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読字障害の人たちは話せないわけではありません。読字障害は話す能力とはまったく別の問題として理解していと思います。/母語の構造が複雑な言語を持つ地域の方が、読字障害が多いと言います。文字は人間が無理矢理つくったものとも言えますから、それを習得しにくい人間が出てきて、そこから識字障害という「病」が生まれたと考えてもいいと思います。(p.47)
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文字は、人類の歴史のなかではごく最近になって作ったものであり、学習しなければならないものであること、このことを改めて認識しておくべきであろう。そしてまた、学校教育における「読字障害」への対応が、早急にのぞまれる。

當山日出夫(とうやまひでお)

追記
誤字・誤表記、訂正。2009/04/02

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