『承久の乱』坂井孝一2022-02-18

2022年2月18日 當山日出夫(とうやまひでお)

承久の乱

坂井孝一.『承久の乱ー真の「武者の世」を告げる大乱ー』(中公新書).中央公論新社.2018
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/12/102517.html

著者の坂井孝一は、『鎌倉殿の13人』の時代考証の担当ということである。これは読んでおきたいと思って手にした。

読んで思うこととしては、次の二つぐらいがある。

第一に、歴史上の承久の乱について。

承久の乱は、学校のときの歴史の教科書に出てきたのを憶えている。その後、日本文学など勉強すると、鎌倉初期のこととして、後鳥羽上皇の名をよく目にするようになった。

承久の乱は、後鳥羽上皇が起こした、鎌倉幕府に対する反乱と思っていたのだが、この本を読むとかならずしもそうではないらしい。後鳥羽上皇が敵視していたのは、北条義時であった。その専制を排除しようとしておこしたのが、承久の乱ということである。結果は、上皇の惨敗であり、その後の鎌倉時代以降の武士の時代が、この乱から本格化することになる。

日本本学などの観点から興味深いのは、例えば『平家物語』が書かれたのは、承久の乱より後のことになる。そして、『平家物語』には、承久の乱での出来事が、かなり反映されているらしいとのことである。

また、この本では、それほど深く触れられてはいないが、藤原定家は、源平の争乱の時代から、承久の乱の後まで生きたことになる。その定家の仕事に、承久の乱は、どのように影響していたのだろうか、興味深いところである。

京都の朝廷……今日の歴史学用語でいえば王家ということになるのだろうが……が、武家の権門に敗れたということは、平安時代からの王朝貴族文化にとってどのような意味があったのだろうか。(だからといって、いわゆる武士の世になってしまったということではないであろう。武士の時代になっても、歌は読まれ続けている。が、その持つ意味が変わってくるということはあったのだろうと思う。)

第二に、ドラマとの関連について。

『鎌倉殿の13人』は、どこまでの歴史を描くことになるのだろうか。この本を読んだ印象としては、とりあえずは、源平の戦いを描くのだろう。そして、鎌倉幕府の創建ということになる。次は、和田の合戦があるだろうか。重要な事件としては、実朝の暗殺事件があるだろう。そして、承久の乱となるかと予想する。

さて、これからのドラマの展開で、実朝はどんな人物像として登場することになるだろうかと思う。そして、後鳥羽上皇は、どうなるだろうか。おそらく、承久の乱が、ドラマの終盤の最大のクライマックスになるのかと思ってみる。

以上の二つのことを思ってみる。

さて、坂井孝一の著書としては、他に、『源氏将軍断絶』『鎌倉殿と執権北条氏』がある。これらも順次読んでおくことにしたい。

2022年2月15日記