『北条義時』岩田慎平/中公新書2022-02-03

2022年2月3日 當山日出夫(とうやまひでお)

北条義時

岩田慎平.『北条義時-鎌倉殿を補佐した二代目執権-』(中公新書).中央公論新社.2021
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2021/12/102678.html

NHKの『鎌倉殿の13人』を見ていることもあって、この本を読んでおきたいと思った。中央公論新社としても、当然のことながらNHKのドラマをあてこんで出版したものと思う。

読んでみて思うことは、次の二点ある。

第一には、歴史書として。

タイトルは、「北条義時」となっているのだが、書いてあることは、むしろ平安時代の終わりから鎌倉時代の初めごろにかけての、武士というもののあり方であると読める。京の都、畿内近辺によりどころを持つ武士もいれば、それ以外の東国や西国の武士もいる。その武士の時代における職能……権門という用語をつかってあるが……の解説からはじまって、この時代のおおきな枠組みを説いていく。これは、これとして非常に興味深く読んだ。

歴史学の近年の知見にもとづいて、武士というもの、鎌倉時代という時代、これをどう全体としてとらえるかという視点から、この本は書かれている。

とはいえ、その所領の支配構造とか、経済的基盤がどうであったか、というような方向にはあまり踏み込んではいない。新書の一冊としてまとめるということでは、ここまで踏み込んで論じるということではないのかもしれない。

第二には、ドラマと関連して。

読んで、なるほど北条義時とはこんなことをした人物であったのか、鎌倉幕府とはこういう構造になっていたのか、北条政子とは何をした女性なのか……というあたり、ドラマの主要な登場人物や、事件……その最終の局面は承久の乱ということになるのであろうが……の数々が、興味深い解説されている。

では、このような歴史的なできごとを、ドラマではどのように描くことになるのか、これはこれとして非常に興味深いところである。

今までの放送と関連しては……たとえば、源氏と平家というが、実際の世の中では、これらの武士たちは混ざり合い絡み合って生きてきたことになる。それを、ドラマでは、源氏の頼朝が正義の側であり、平家の清盛が悪の側である、とかなり単純化して描いてあるのだが、ここはちょっと違うのではないかと感じるところがある。(まあ、歴史の結果として源頼朝が勝者になる話しなので、これはこれでいいかとも思うのだが。)

以上の二点のことが、読んで思ったことなどである。

鎌倉時代、武士の時代の入門書としても、また、NHKのドラマの参考書としても、よく出来ている本だと思う。

2022年1月27日記