『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』 ― 2009-01-05
2009/01/05 當山日出夫
鈴木康之.『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』(日経ビジネス人文庫).日本経済新聞社.2008
かなり以前に書いた、この本のことにつき、たくさんの方がトラックバックなど送ってくれている。私自身は、広告業界とは何のかかわりあいもない人間である。普通の、新聞の読者、である。それでも、この本を読んでから、自分のうちで、何かが変わったなと思うことがある。端的にいえば、広告を読むようになった。
そして、もう一つは、評価以前に、まず、相手に読んでもらえるようにすること、ということを強く意識するようになった。プレゼンテーションであれば、まず、聴衆に、関心を持ってもらえるようにするには、どうすればいいか、を考えるようになった。
これは、特に広告についてだけのことではない。学生の書くレポートについても同じであると、考える。
学生には、いささか脅迫めくが次のようにいう。
「君たちが、提出したレポートを、教員が、すべて丹念に読んでいるなどと思ってはいけない。多人数の講義などで、何百枚もあるようなレポートを、丁寧に読んでいる時間などあろうはずがない。まず、表紙を見る。大学指定の所定の表紙以外の場合(自分で書く場合)、そこに、タイトル・氏名・日付・科目名(曜日・時間・担当教員名)などが、きちんと書いてあるかどうか。最後を見て、脚注や参考文献リストの書き方が、ルールにのっとっているかどうか。それから、中身をさっとながめる。各パラグラフが数行~十数行程度で、きちんとならんでいるか。最初と最後のパラグラフを見る。それが、適切に対応して、問題提起・まとめ・アブストラクト、になっているかどうか。で、ようやく中身を読んでみようか……(と、私なら考える。)」
『名作コピーに学ぶ……』は、広告として、人目をひきつける文章の書き方についての本。だが、このような文章が書けるためには、その前提として、ごく普通の文章がまともに書けないといけない。
学生のレポートであれば、人目をひきつける(教員の目にとまる)ためには、奇をてらう必要など無い。むしろ、逆に、徹底的にオーソドックスに、当該研究分野でのルールに従った ドキュメントであることが望ましい。たいていの学生は、それを知らない。また、多くの教員も強いて教えようとはしない。したがって、きちんとアカデミックなルールに従ったドキュメントは、それだけで、おのずから目立つ。つまり、読んでもらえる、のである。
このような考え方は、このブログでもとりあげた、次の本にも共通する。
酒井聡樹.『これから学会発表する若者のために-ポスターと口頭のプレゼン技術-』.共立出版.2008
なお、『これから……』について、上記のような書き方をするのは、主に、人文学系(日本文学とか日本史など)の分野の流儀。分野によっては、『書名』とは、絶対にしない。これだけで、もう、読んでもらえない可能性がある。
読んでもらえるドキュメントを書くのは、難しい、のである。
當山日出夫(とうやまひでお)
『ARG』356号の感想:福澤展 ― 2009-01-05
2009/01/05 當山日出夫
『ARG』356号を読んでの感想をいささか。
まずは、慶應の福澤展。今回の『ARG』では触れられていないが、福澤展のHPからリンクをたどって、「応援団募集」にいくと、展覧会へのリンクバナーが用意してある。
http://d.hatena.ne.jp/arg/20081025/1224908268
私自身が慶應出身である。このあたりが、慶應のサービスの良さである。塾員として、150年、福澤展になんとか協力したい、という思いをうけとめる、受け皿を用意しておく。
岡本さんがICU(国際基督教大学)のことで、以前、話されていたこと。図書館の本には、卒業生や、あるいは、在学中に亡くなった学生のご遺族からの、寄贈が多くある。それには、「Memory Of ~~~」と、それぞれに記されているよし。
今、どこの大学も、経営的に苦しい状況にあるだろう。それを援助するのは、財政的な部分も大きい。だが、直接、金銭にかかわらないで、自分の出身校に対して、何かできるかもしれない、そのルートを多方面にわたって用意しておくことを、もっと考えるべきだろう。
この意味では、駒澤大学の「コマブロ」は、面白い試みだと思う。もちろん、指摘のように、単なるリンク集にとどまっているのは惜しい。(この点では、慶應の「応援団募集」における、一覧も、似たようなものではあるが。)自分の作ったブログやHPが、母校からリンクされている、ということが、その学校の出身者にとって、誇りと自信につながる、このような方向が、学校を基軸とした、ある種の共同体を形成していく。
以上のようなことを感じたのは、次の本の影響かもしれない。
竹内洋.『学問の下流化』.中央公論新社.2008
當山日出夫(とうやまひでお)
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