『現代ロシアの軍事戦略』小泉悠/ちくま新書2022-03-28

2022年3月28日 當山日出夫(とうやまひでお)

現代路リシアの軍事戦略

小泉悠.『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書).筑摩書房.2021
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073952/

話題の本ということで読んでみることにした。この本が出たのが、昨年(二〇二一)の五月。このときは、特に気にとめることのなかった本であるが、やはり昨今のニュースなど見ていると、読んでおきたくなった。

軍事の門外漢として、特にこの本について、どうこう言うところはない。なるほど、ロシアの軍事をめぐる状況とはこんなものかと思って読むだけのことになる。

著者の小泉悠は、このところテレビでよく見る。ニュース番組の解説などで、頻繁に登場している。たまたま見るようなことがあるときは、なるべく見るようにしている。

軍事の専門家の考えることはこういうことなのか、というあたりが非常によくわかる。そして、有象無象、あまた登場してくる、テレビの解説者のなかでは、そのことばを信用していいと思える一人でもある。

時に饒舌であると同時に時として寡黙である。それは、専門家というのは、自分の専門領域のことについては、きちんと語るべきことを語る。しかし、分からないことについては、分からないと明言できる。これが専門家の知見というものである。

そういえば、ここ二年ほど、COVID-19の流行以来、テレビなどで、多くの専門家のことばを聞いてきた。そこで分かったことは、一般にいわれる専門家といっても、ほとんど何も語っていないに等しい、あるいは、余計なことまでしゃべりすぎる、ということであったように思う。

専門家というのは、自分の専門領域のことについては、自信を持って語るべきであると思うが、何について専門的知見を有しているのかについては、常に批判的、自覚的であるべきだろう。

何かことがあると、コメンテーター、評論家が、のさばりだす。そのようななかにあって、そのことばに耳をかたむける価値のある専門家であろう。

強いて、この本の読後感として一言だけ述べておくならば……こんなはずでは
なかったのに……ということになるだろう。予見、観測が裏切られても、そこでふみとどまって、なぜそのような判断にいたったのか、反省する視点が確保できている。この冷静さが今では貴重なものである。

2022年3月27日記