「廃炉への道2024 瀬戸際の計画 未来はどこに」2024-03-21

2024年3月21日 當山日出夫

NHKスペシャル 廃炉への道2024 瀬戸際の計画 未来はどこに

おそらくNHKとしては、サイエンスZEROの取材と並行して番組を作っているのだろうと思う。同じ取材源を使って、どのように何を伝えるのか、考えてみることになる。録画しておいて見た順番としては、サイエンスZEROの方が先になる。

廃炉の技術的な可能性がゼロではない(リスクは当然あるとしても)、ということは言えるのだろう。世の中には、これを否定的に見る考えの人もいるだろうと思う。しかし、そのような立場にたってしまうと、今後の議論が全く先に進まないことになる。(ではどうすればいいのかということになってしまうのだが。)

NHKスペシャルで語っていたのは、技術的な課題の克服の可能性よりも、社会の合意の形成の方途についてであった。アメリカのスリーマイル島の事故のことが出てきていたが、これは、まず基本的にアメリカの社会における、ものごとを決める手続きに関する感覚の相違ということを考えておく必要があるだろう。同じ方法を日本で採用できるかどうかは、これも、(技術的な課題と同様に)未知数であるかと思うが、どうだろうか。

日本において、地元住民をふくめた対話の可能性を探る動きがあることは、歓迎すべきことである。しかし、最終的な合意形成にいたるまでの道のりはかなり険しそうである。(懸念されるのは、番組では触れていなかったことだが、国とか東京電力のことは何でも反対するという立場の人がいるだろうということであるが、こういう人たちの存在をふくめて、社会的合意にいたるのはかなり難しいかもしれない。)

問題を広い意味でとらえなおすならば、日本の社会全体としてどのように合意形成をめざすべきなのか、それはどのようにすれば可能なのか、という政治や統治のシステム、公共性、民主主義のあり方、というような広範囲な観点からの議論が必要になってくることであると思う。

すくなくとも、原子力発電そのものに賛成か反対か、という類いの踏み絵をつきつけるようなことは避けるべきだろう。そうではなく日常的な生活感覚を尊重しつつ、公共的なテーマへとどうつながるのか、あるいはつながることがないのか、というところから、手探りで始めるしかないのだろうと思う。必要なのは、相手を論駁することではなく、対話することである。

2024年3月19日記

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