二つの写楽2008-06-12

2008/06/12 當山日出夫

先に書いた、『ARG』326号へのコメントの続きである。

同じコンテンツが、別ルートで見られる(公開されている)ことに気づいたのは、映像学部のデジタルアーカイブ論で、いろいろと、インターネット上の「デジタルアーカイブ」を探していたとき。

写楽の浮世絵 三世大谷鬼次の奴江戸兵衛

これが、二つのHPで見られることに気づいた。

第一に、東京国立博物館 名品ギャラリー ここで、「写楽」を、キーワードにして検索をかけると、出てくる。

http://www.tnm.go.jp/jp/gallery/index.html

ここの利用規程を見ると、「著作権・リンク」に、以下のようにある。

http://www.tnm.go.jp/jp/footer/copyright.html

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当サイト内の全画像・資料は、利用者個人がブラウザを用いて画面上で見ることを前提にしています。別の媒体に収録して再配布する等の行為は有償・無償を問わず許諾できません。

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第二が、文化遺産オンライン

http://bunka.nii.ac.jp/Index.do

この画像データは、東京国立博物館にリンクしてある。リンクをクリックすると、上記の、東京国立博物館の画像データが、表示される。また、二つのサイトの画像を、ディスプレイに表示して見て観察してみると、(私の判断では)同一の画像データである。

ここの利用規程は、「このサイトについて」の「概要」で、「著作権」として、次の記載がある。

http://bunka.nii.ac.jp/jp/about/index.html

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このホームページに掲載されている個々の情報(文字、写真、動画、イラスト等)は著作権の対象となっています。また、「文化遺産オンライン」全体も編集著作物として著作権の対象となっており、ともに著作権法及び国際条約により保護されています。法律で認められたものを除き、無断で転用・引用・改変することを禁じます

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ここには、「法律で認められたものを除き」とある。教育目的での利用、たとえば、インターネットに接続できない教室の場合、ブラウザの画面をコピー(ALT+PrintScreen)して、プロジェクタで、学生・生徒に見せる、このことは、フェアユースとして、認められるのだろう。

現行の著作権法は、すべてのコピーを禁じているわけではない。特定の利用(教育目的で、教室でのみ)であれば、可能であるはず(私の理解では)。また、どのような著作物であっても、適切に、それを「引用」する権利も、逆にある。これをすべて禁じたら、あらゆる研究が出来なくなってしまう。先行研究や作品の引用が認められてこそ、研究活動ができ、論文も書ける。

今、すべての、学校(小学校から大学にいたるまで)の教室が、インターネット接続が可能であるわけではない。そのとき、国の所有する文化財(この場合、写楽の浮世絵)が、美術教育に利用できない、してはいけない……ということを、東京国立博物館は宣言したに等しい。一方で、同じ画像データが、文化遺産オンラインでは、「法律で認められたものを除き」と限定している。

東京国立博物館の、利用規程は、早急に見直すべきであると、私は、考える。

當山日出夫(とうやまひでお)

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