「欲望の資本主義 2024夏特別編 実感なき株高の謎」2024-07-23

2024年7月23日 當山日出夫

BSスペシャル 欲望の資本主義 2024夏特別編 実感なき株高の謎

はっきりいって、経済のことはまったくわからない。だが、経済について考えることが、社会について、歴史について、人間について考えることにつながる、という認識ではいる。特にこれからの時代、経済を抜きにして人間の世の中のことを語ることはできないだろう。

私の世代だと、バブル崩壊ということは記憶にあることである。バブル景気のころ、たしかNTTの民営化のときだったが、NTT株を買わないやつは馬鹿である、というような雰囲気が、私の身の回りにあった。まあ、私自身は何の興味もないことであったが。

株式投資ということ、特に、長期的な視点にたっての投資は、経済の発展のために重要であるということは理解できるつもりだが、しかし、では、会社とは何のために存在しているのか、分からなくなったのが今日かもしれない。会社の資産価値を高めることが経営者の責務であるかもしれないが、だが、それはあまりに短期的な視野のことであるようにも思える。

もし東芝の株を買って投資することが出来たとしても、では、その会社はこれからどんなことをやってくれるのか、それは、日本という国家や国際社会にとって意味のある仕事なのか、判断できる人はいないかもしれない。あるいは、アメリカのIT企業は、いったい何のために存在しているのだろうか。(まあ、そのおかげで生活が便利になったということはあるのだが。)

番組では言っていなかったが、これからは、AIを使った取引が中心になるだろう。AI対AIで、売り買いの判断が交錯することになる。それを、ごくわずかの時間の間に繰り返す。瞬時に変化する株価の上下で、利益を得ようとする。そこに人間の判断の介在する余地はない。こうなると、経済とは、いったい何であるのか、わからなくなる。

ますます、実際に働いている人間の実感から遠いところで、株価だけがAIによって動いていく。それは、一部の人には利益をもたらすだろうが、多くの勤労者に実感できる生活の豊かさということにはならないのかもしれない。

あるいは、AIによる取引による瞬時の乱高下の株価に実体経済がふりまわされて破綻をきたす、そのような近未来を描くこともできようか。

富の偏在が社会全体にどのような変化をもたらすことになるのか。国家などの規制から自由でありたいとするのが、今のグローバルな資本のあり方であろう。だからといって、国際的な巨大資本が、国家の意思決定に影響を及ぼさないとはいいきれない。

多くの勤労者である人びとが、働いていることの実感を得られないようになったとき、世界全体にどのような意識の変革が起こることになるのか、これは誰にも予測できないことなのだろうと思う。そうなってみないと分からないということになる。

番組のなかではアベノミクスが失敗とも成功とも言っていなかった。しかし、少なくとも日本国内で株価が上がったとしても、円安になれば、国際的にその価値は目減りする。これは、誰が考えても分かりそうなものだけれど。

最後に、最近の話題でいえば、JAMSTECの「しんかい6500」の後継機を開発するような企業があるなら、未来に向けた投資も意味あるものかと思ったりするのだが。

2024年7月16日記