おとな時間研究所「懐かしの喫茶研究」2025-04-23

2025年4月23日 當山日出夫

おとな時間研究所 懐かしの喫茶研究

たまたまテレビの番組表で見つけて録画しておいた。

このごろ、いろんな番組で昔からの喫茶店がとりあげられることが多い。いわゆる昭和の喫茶店である。これは、どうしてなのだろう。

一つには、街のなかから昔風の喫茶店が姿を消しつつある、ということがあるのだろう。ちょっと前までは、普通にあった喫茶店というものが、見かけないものになってきている。そのかわりに、チェーン店の喫茶店、というより、カフェ、といった方がいいだろうか、が増えてきている。今、私が住んでいるあたりにも、そのような店がいくつかある。立地条件としては、郊外型の店で、自動車で行ってということになる。

そして、こういう新しいチェーン店では、基本の店舗のアーキテクチャが、お客さんを長居させないようになっている。多少の時間は座っていてもいいのだが……まあ、あからさまに客を追い出して回転をよくするということはないにしても……原則的に、そんなに長く時間を使いたいというところにはなっていない。

食文化史というような観点から、昔ながらの喫茶店が、街にどれぐらいあり、どんなメニューで、いくらぐらいの価格で提供していたのか、そこに来るお客さんはいったいどんな人たちであったのか、ということは、記録して残しておくべきことのように思う。

昭和五〇年ごろ、一九七〇年代、東京の街には多くの喫茶店があった。住んでいた、目黒の界隈に、また、大学の三田の周囲にも、たくさんあった。そのうちのいくつかは、コーヒー専門店、ということで営業していた。コーヒーの入れ方としては、サイフォン方式である。今では、このような店は、もう無くなってしまっている。(ごくまれに残っているかもしれないが。)

一般の喫茶店のコーヒーは、ネルドリップ方式であった。これは、番組の中で紹介されていた。これは、フィルターにつかうネルの洗濯などが、手間がかかる。最近は、ペーパーフィルター方式が多くなっている。

私が学生だったころ、ペーパーフィルターで、自分の家や部屋で、コーヒーを飲むというのが、人びと(特に学生などの若い人たち)の間で、流行のようになっていた。

この番組を見て、もっとも興味深かったのは、作っておいたコーヒーを、小さな鍋で温めてカップにそそいで提供する、という方式。私の記憶にある限りだと、目の前で、この方式を見たのは、二回だけある。一回目は、信州の大町においてである。ここでは、学生のとき、夏休みに恩師の先生による勉強の合宿をしていた。大町の街中の喫茶店で、鍋でコーヒーをあたためているのを見て、驚いたという記憶がある。それから、かなりたって、何かの用事(学会かなにかだったと思うが)で東京に行って、新宿駅の西口の小さな喫茶店にはいって、そこで、同じように、小さな鍋で、コーヒーをあたためているのを見て、こういうやり方が一般にあるのかと、再認識したことを憶えている。

高校生のころ、京都の街に出るとき、河原町通りにあった六曜社にはよくいった。私の記憶だと、コーヒーが一杯で、150円ぐらいだっただろうか。200円はしなかったように憶えている。(そのころ、岩波新書の一冊が、150円均一だった。)

大学生になってからは、神保町界隈の喫茶店にはよく行った。有名な店であり、今でも続いているところもあるはずである。(ちなみに、ランチョンが、木造の古い建物だったのを憶えている。三省堂も昔の店舗だった。)

日本の人びとが、どのようにコーヒーを飲み、それを提供する店が、どの時代に、どのようであったか、これはこれで非常に興味あるところである。

コーヒーに塩をいれて飲むというやり方は、これは海軍の方式である(日本海軍ではなかったと思うが)、と何かで読んだのを憶えている。それが普通である国もあるらしい。

2025年4月19日記

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