『おちょやん』あれこれ「たった一人の弟なんや」2021-02-28

2021-02-28 當山日出夫(とうやまひでお)

『おちょやん』第12週「たった一人の弟なんや」
https://www.nhk.or.jp/ochoyan/story/12/

前回は、
やまもも書斎記 2021年2月21日
『おちょやん』あれこれ「親は子の幸せを願うもんやろ?」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/02/21/9349246

この週で弟のヨシヲとの再会のドラマがあった。見どころとして思うのは、次の二点ぐらいだろうか。

第一には、やはりヨシヲのこと。

道頓堀で女優をしている千代の前に、突然姿をあらわした弟のヨシヲ。千代は、ヨシヲのことを心底から思っている。だが、ヨシヲの方はどうだろうか。ヨシヲは、それなりに苦労の多い人生を歩むことになったのだろう。そして、結果としては、千代の仕事の障害となろうとする。

単なる離ればなれになった姉と弟の再会ドラマだけにおわらせず、非常に屈折した思いをいだいているヨシヲ、しかしそのヨシヲのことを思っている千代。さらには、この二人を冷静に見ることになる一平……このあたりのことが、実に情感深く描かれていたと思う。

最後、ヨシヲは千代のもとを立ち去っていったのだが、これから再びの再会はあるのだろうか。どことなく余韻を残した別れであった。

第二は、芝居の興行のこと。

その当時の芝居の上演は、警察の検閲があった。この上からの規制のある一方で、また、芝居の興行にまつわっていろいろと利害や利権がからんでいるようだ。そして、それは往々にして社会の暗黒面とつながっていることにもなる。

昭和戦前の芝居興行の舞台裏ということを、姉と弟の再会のドラマとからめて、この週はたくみに描いていたと思う。

以上の二点が、この週を見て思ったことなどである。

さらに書くならば、道頓堀で、岡安の人びとも、また、福富の人びとも、千代や一平に対してやさしい。このやさしさのなかで、これからの千代の女優としての成長があるのだろうと感じる。

次週、一平の襲名をめぐって話しは展開するようだ。楽しみに見ることにしよう。

2021年2月27日記

追記 2021-03-07
この続きは、
やまもも書斎記 2021年3月7日
『おちょやん』あれこれ「一人やあれへん」
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/03/07/9354382