100分de名著「中江兆民“三酔人経綸問答” (2)洋学紳士と豪傑君」2023-12-14

2023年12月14日 當山日出夫

100分de名著 中江兆民“三酔人経綸問答” (2)洋学紳士と豪傑君

対話ということ、これは、相手を論破することではない。自分と異なる意見の持ち主に対して、同意はしないけれども理解はする。エンパシーの重要性ということになる。

かなり以前のことになるが、内田樹がこのような意味のことを書いていたのを読んだと憶えている……自分と異なる意見の持ち主に対して、何故、自分はそのように考えることがないのか、自省してみる必要がある……これは、もう昔のことで、近年の内田樹の書いたものには、自分が書いたものへの批判は読まないことにしているとしているらしいが。

ともあれ、明治二〇年の段階において、問答、対話の形式を採用することによって、異なる意見の対立から、新たな何かを見出していこうとするする姿勢は、今日の目で読んでみても、いろいろと学ぶべきところがあると感じる。

2023年12月13日記

FRONTIERS「日本人とは何者なのか」2023-12-14

2023年12月14日 當山日出夫

FRONTIERS 日本人とは何者なのか

NHKがBSを一つのチャンネルにしたことで、新しく始まった番組である。とても力を入れて作ったと感じる。

だが、「日本人」の成り立ちを、遺伝学的に論じて紹介するだけなら、もっと簡便な番組の作り方でもよかったように感じるところもある。無駄に映像効果にコストを使ってしまっているという印象は残る。

縄文人は、アフリカから出てきたホモ・サピエンスが、ユーラシア大陸の南ルートで移動して、日本にやってきた。日本列島の中で孤立して独自の縄文文化を創った。その後、独自の文化が一万年以上にわたって続く。その始まりは一〇〇〇人ほどだと推定される。そして、弥生人がやってきて、稲作と金属をつたえた。さらに、古墳時代になって、また新たな人びとが、これは大量にやってきて、現代の「日本人」につながっていくということになる。まあ、ざっとこんな筋書きで、三重構造説ということになる。

「日本人」と共通するDNAを持つ人びとが、現代でも東南アジアの原始的な(と言っていいだろうか)狩猟採集民族として生きていることは興味深い。

たしかにDNAの解析からは、番組で紹介していたようなストーリーを考えることになるのだろうということは理解できる。

「日本人」の起源が、アジアの各地にわたる多様な人びとに求められるということは、ある意味では、「日本人」「日本文化」とは何であるか、という問いかけにつながるものであることは確かである。

番組のなかであまり詳しく語られていなかったのが、縄文から弥生、そして古墳時代へと、どのように日本列島のなかで人びとが生活し(縄文時代が豊かの暮らしであったことは出てきていたが)、異なる出自の人びとの間には何があったのか(たぶん争いもあったのだろう、その痕跡を見ることができる)、そして、それが最終的に古代の統一国家の「日本」へとつながるのは、どういう経緯によってなのか……いわゆる歴史学の方面からの問題ということになるだろう。この狭義の歴史学の問題こそ、今の「日本」の起源への直接的な問いかけになるはずである。

騎馬民族説というのは、最近ではほとんど目にすることのなくなった用語である。(私の学生のころはさかんに言われたものである。)アジアのいろんなところから、人びとの渡来があったことは、ここで改めて考えておく必要のあることである。

おそらくこれは、「純粋な日本文化」があるとするならば、それは何なのか、ということになる。そんなものは無いということもできる。

私の興味関心はどうしても言語の方面にある。「日本語」はどこに起源があるのだろうか。「日本人」の起源が多様であるとして、しかし、一方で言語の点においては、日本語と琉球語(これは同系統の言語である)、それとアイヌ語になる。かなり単純である。これらの言語の成り立ちと、DNAから考える「日本人」の成立、その起源の多様性とはどう関係することになるのだろうか。

科学的なDNAの解析と、いわゆる「人種」「民族」「言語」、これらは世界の歴史のなかでどのように見ることになるのか。これからの研究の進展が期待される分野である。ホモ・サピエンスの歴史が今後どのように記述されることになるだろうか。そして、それは、われわれ自身の認識にどう影響することになるだろうか。

2023年12月8日記