新常用漢字:拡張新字体のゆくえ2008-06-20

2008/06/20 當山日出夫

小形さんのブログ「もじのなまえ」で告知がある。「INTERNET WATCH」で、(新)常用漢字、の審議過程や、委員会の考え方についての、連載が始まっている。

ものなまえ

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20080619/p1

INTERNET WATCH

”情報化時代”に追いつけるか? 審議が進む「新常用漢字表(仮)」

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/jouyou/2008/06/19/19998.html

たぶん、これから、小形さんが、順次、指摘なさるであろう。ここで、私なりに簡略に問題点を整理すれば、

(1)日本には、いくつかの政策的な文字集合がある。

教育漢字・常用漢字・人名漢字・印刷標準字体(表外漢字)・JIS漢字(現在は、0208、と、0213:04の混在の状態)。また、その外側に、ユニコードの世界が広がっている。

(2)これらの集合の関係が、整合性を失ってきている。(文字種として見た場合のこと)。これは、すでに、小形さんが指摘。

(3)その文字集合の整合性のなかには、「字体」の問題をふくむ。簡単にいうと、当用漢字のときに制定された(当用漢字字体表)漢字の字体がある。字体の簡略化、例えば、「區→区」、「歐→欧」、である。であるならば、これになぞらえて、「鴎」が登場することになる。「鴎」は、常用漢字にない。通常の漢和辞典には無い字、拡張新字体、という。

また、私が調べたことのある「祇」。78JISでは「示氏」、83JISでは「ネ氏」、0213:04では「示氏」、となる。「ネ氏」は拡張新字体。しかし、京都の祇園では、むしろ、こちらが通行の書き方である。

常用漢字は、「新字体(略した字体)」、それに対して、印刷標準字体は、いわゆる「旧字体」、である。さらにややこしいことに、許容三部首なるものをふくむ。「しんにゅう(辻)」「しょくへん(食)」「しめすへん(示)」である。

印刷標準字体をうける形で、0213:04の改訂が行われている。現在、WindowsVistaに実装。

印刷標準字体の中の文字を、(新)常用漢字表に入れるとなると、その字体は、「新字体」に変更して入れることになるだろう。でなければ、常用漢字内部の字体の整合性がとれない。

そうなると、JIS規格の再改訂が必要になる。公文書が常用漢字に準拠して書く、ということであるならば、日本国の公文書が書けない、JIS規格漢字は、きわめて問題……という論理になる。

この悪循環といしか言いようのない状況が、漢字の委員会には、自覚できているのであろうか。

この点の解決策としては……JIS規格票に示される、文字概念、および、その字体と、実際のコンピュータに実装するフォントデザイン、これを、切り離して、柔軟に運用する発想がもとめられる。また、同時に、それぞれが、「アーカイブ」として、将来において確認できるものでなければならない。

このあたりの事情、今度のワークショップで、安岡さん、高田さん、それに、小形さんに、発表してもらうことになる(と思って、企画した。)

當山日出夫(とうやまひでお)

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