『いつも彼らはどこかに』小川洋子2021-10-14

2021-10-14 當山日出夫(とうやまひでお)

いつも彼らはどこかに

小川洋子.『いつも彼らはどこかに』(新潮文庫).新潮社.2016(新潮社.2013)
https://www.shinchosha.co.jp/book/121527/

続きである。
やまもも書斎記 2021年10月9日
『凍りついた香り』小川洋子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/09/9430626

短篇集である。収録するのは、次の作品。

帯同馬
ビーバーの小枝
ハモニカ兎
目隠しされた小鷺
愛犬ベネディクト
チーター準備中
断食蝸牛
竜の子幼稚園

どの作品もなにがしかのかたちで、生きもの、動物が出てくる。この点をのぞくと、特にこの短篇集として共通のテーマがあるようには読めない。(少なくとも私には。)

だが、全体を通じて、登場する動物たちへの愛おしみの気持ちとでもいうべき感情が、じんわりとつたわってくる。ひょっとするとこの短篇集の主人公は、動物たちであるのかもしれない。

小川洋子の作品は、天下国家を論じるというものではない。この世界の片隅でひっそりと生きている、普通の、あるいは、ちょっと普通とは違っている……人びとの、日常の生活を描いている。読後感としては、かすかな余韻が残る。というよりも、小川洋子の作品は、その文章を読んでいる時間を愛おしむという感じの文章である。

2021年6月10日記

追記 2021年10月21日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年10月21日
『最果てアーケード』小川洋子
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/21/9433750

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