「犬神家の一族〜エンターテインメントの革命児たち〜」2025-01-08

2025年1月8日 當山日出夫

アナザーストーリーズ 「犬神家の一族〜エンターテインメントの革命児たち〜」

再放送である。二〇二〇年の放送。

映画の『犬神家の一族』は見ていない。だが、この作品が、日本の映画史において非常に重要な意味のある作品であることは理解できる。これが公開されて話題になったのは、私の学生のころだったが、見ようという気にはならなかった。

ミステリー好きの人間としては、この時代、角川文庫で横溝正史の作品を新しく刊行してくれたことは、とてもありがたかった。中学生から高校生のころ、シャーロックホームズから読み始めて、エラリー・クイーンをだいたい読んだ。創元推理文庫で主に読んだ。これも、今では、新しい翻訳に変わっている。それから、江戸川乱歩も読んだ。

ちょうどこの時期が、松本清張などの社会派推理小説から、綾辻行人や北村薫などの新本格へと移行するときになる。この間を埋めるのが、横溝正史の角川文庫によるリバイバルだったといっていいだろうか。

これは、出版の歴史としては、文庫本の作り方や売り方を大きく変えるできごとでもあったことになる。番組では、文庫本にカバーをかけ、キャッチコピーの帯をまくようになったのは、角川文庫からであるということだったが、そうなのかと、思い返してみることになる。

私が高校生ぐらいまで、文庫本というとパラフィン紙(でよかったと思うが)がかかっているのが普通だった。これを最後まで残したのは、岩波文庫だったはずである。

『犬神家の一族』であるが、角川春彦の経営戦略として、怪奇・土俗・ミステリー、これらをあわせもったものとして、横溝正史が選ばれたということらしい。話しをしに横溝正史のところに行った角川春彦が、もう故人だと思って遺族に話をするつもりで来た、というのは面白い。それぐらい、横溝正史は、忘れられた存在であった。

ただ、『八つ墓村』については、漫画版を記憶している。たしか、「少年マガジン」だったろうか、はっきりとは憶えていないのだが、子どもむけの漫画雑誌に連載されていたのを、とびとびに読んだことは憶えている。

横溝正史の『犬神家の一族』『八つ墓村』『獄門島』、これらの作品は、「探偵小説」である。ミステリー好きの人間としては、「推理小説」というよりも「探偵小説」という言い方を好む。

これも、歴史的にみれば、横溝正史や江戸川乱歩が書いた「探偵小説」は、「キング」「新青年」「宝石」などに掲載された、一般大衆向けの、ミステリーであり、怪奇小説であり、冒険小説である、このような雑多な娯楽性をもった読み物を創唱して言っていると、理解しておいた方がいいだろう。

市川崑は、子どものときに見た『東京オリンピック』が非常に印象に残っている。私が小学生のときだった。この映画の監督が市川崑であるということを認識したのは、高校生ぐらいになってからだったろうか。

『木枯し紋次郎』のテレビ版は、見ている。これは、同じ時間帯で「必殺シリーズ」と重なっていたので、どちらを見ようか悩んだものである。今のように手軽に録画できる時代ではなかった。上條恒彦の歌った『だれかが風の中で』は、今でも憶えている歌の一つである。原作の笹沢佐保の「木枯し紋次郎」も、大学生ぐらいのときに、文庫本で読めるかぎりはよんだ。これも、ミステリとして非常によく出来た作品ということもできる。

エンタテイメントということばが、普通に使われるようになったのは、私が大学生ぐらいからのことだったろうか。その流れのなかに、角川の映画もあったことになる。

番組のなかで、インタビューで誰かが言っていたが、アイデンティティーという新しいことば、という意味のことを述べていたが、このことばも、使われるようになったのは、私が大学生だったころからのことになる。これも、今では、ごく普通に使うことばになっている。

2025年1月6日記

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