フロンティア「古代文明 同時崩壊のミステリー」2024-02-25

2024年2月25日 當山日出夫

フロンティア 古代文明 同時崩壊のミステリー

これは面白かった。

ミケーネ、ヒッタイト、エジプト、古代の東地中海地方の古代文明が、紀元前一二〇〇年ごろ、ほぼ同時に崩壊している。そのなぞを探るこころみである。

気候変動。干魃があった。これは、地層、花粉、それから、鍾乳洞の石筍から当時の気候がわかるという。特に、石筍の分析から降水量の推測ができるということは面白い。それによると、大規模な干魃があったことが分かる。

地震。地層を調べると液状化の痕跡がある。このあたりには、活断層がある。かなりの規模の地震が多発していた。

疫病。ミイラに天然痘の痕跡がある。今では天然痘は根絶された病気になっているが、昔は人間の存在を脅かす怖い病気だった。医学の未発達な時代、ウイルスによる疫病の流行に人びとはなすすべがなかった。

これらは社会の不安をもたらす。人びとは離散し難民となり、あるいは、侵略者にもなった。それが、この番組では「海の民」を生み出すことにつながったということになっていた。実際に「海の民」がどんなだったかなかなり推測を交えてのことになるが、DNAの分析などから、多様な出自の人びとであることが分かるという。

古代地中海は、交易のネットワークで結ばれていた。青銅器(銅と錫で作る)は、古代文明にとって必須のものであった。それが、交易が途絶えることで作れなくなる。

最終的な仮説としては、流浪した人びとが「海の民」となって古代文明の崩壊をもたらしたのでは、ということになっていたが、なるほどそう考えることもできるかもしれない。

ただ、古代地中海が海を通じた交易ネットワークを形成していたことは、とても面白い。だからこそ、古代文明が繁栄し、同時に、危機にみまわれると同時に崩壊することになる。そして、そこには、地中海を活躍する「海の民」の存在があったことになる。少なくとも、海洋交易から見た古代社会というものを考えることになる。

海洋交易から歴史を見るという視点は、重要である。

日本の歴史もまた、東アジアの海洋交易から考える必要がある。古代であれば、朝鮮半島や中国は無論のこと、北方の交易圏もあっただろう。戦国時代以降であれば、大航海時代として世界的な交易のなかの日本を考えなければならない。また、社会を構成する人びととして、農民以外に海で生活する人びとのことも重要である。

歴史を研究するのに、これまでの人文学的手法だけではなく、気候変動や地震のことなど、多様な学際的研究が必要である。日本でも、ようやくそのような研究がおこなわれるようになってきたかと思って見ている。(私の専門にかかわるところでは、どうしても古代の文字の解読ということにはなるのだが。)

ところで、過去の気候のことについては、福井の三方五湖にある年縞博物館に行ってみたくなった。ここは過去七万年の気候の痕跡が見られる。

2024年2月20日記

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