『孤狼の血』柚月祐子2017-01-20

2017-01-20 當山日出夫

柚月祐子.『孤狼の血』.角川書店.2016
http://shoten.kadokawa.co.jp/sp/korou/

第69回の日本推理作家協会賞の受賞作である。だから、というわけでもないのだが、読んでみることにした。

警察小説である。

警察官を主人公にした作品は、それぞれの国によって、流儀というか傾向があるようだ。イギリスにはイギリスの、アメリカにはアメリカの、そして、日本には日本の。他には、近年では、北欧を舞台にした、ヘニング・マンケルの作などもある(残念ながら、作者は、もう故人となってしまった)。

日本の警察小説である。たぶん、佐々木譲あたりが代表的作家かと思う。最近に話題作では、『64』がある。

横山秀夫.『64』.文藝春秋.2012
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163818405

警察小説には、それぞれの国の流儀があると書いた。日本の警察小説の場合、かならずしも、警察官は、イコール、正義、というわけではないようだ。いや、それなりに、「正義」の立場にたって仕事をしているのであろう。だが、それは、時として、警察内部の抗争があったり、いや、むしろ、日本の警察小説は、警官を主人公とした、警察という「組織」を描いた小説とみるべきかもしれない。

そういえば、古くは、松本清張の作品、『点と線』なども、ある意味で、警察小説という趣がないではない。警察という組織のなかで、自分なりの「正義」を貫こうとする警察官の姿をそこに見ることができる。

この『孤狼の血』であるが、一言でいうならば、悪徳警官小説ということになるのだろう。暴力団の抗争事件をしずめるためには、なにがしか、相手の組織の内側にはいっていかざるをえない。そして、それは、同時に、警察という「組織」からは孤立することを意味している。まさに、タイトルのごとく、「孤狼」として生きざるをえない。

この『孤狼の血』、ただの悪徳警官小説で終わっているのではない。裏の筋書きがある。それが、最後に明かされるのであるが……この小説、時代設定は、昭和の末になっている。何故だろうかとと特に気にせずに読んでいくのだが、最後になって、この時代に設定してあったことの意味が明らかになる。この時代の事件として物語らなければ、『孤狼の血』という作品は成立しない。

日本における警察小説という領域でのすぐれた佳品であると読んだ。

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