『戦争と平和』(三)トルストイ/望月哲男(訳)光文社古典新訳文庫2021-12-04

2021-12-04 當山日出夫(とうやまひでお)

戦争と平和(3)

トルストイ.望月哲男(訳).『戦争と平和』(三)(光文社古典新訳文庫).光文社.2020
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334754327

続きである。
やまもも書斎記 2021年11月27日
『戦争と平和』(二)トルストイ/望月哲男(訳)光文社古典新訳文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/11/27/9443468

三冊目には、戦争のことは出てこない。戦闘場面はない。ただ、解説によると、この小説の舞台背景としては、ロシアとフランスの間では、ただならぬ事態が進行していたようである。だが、西欧の歴史に疎い私としては、ただ小説の物語の展開を追って読んでいる。

ここで魅力的なのは、なんといっても、ナターシャである。ロシア的な理想の女性というイメージで登場してくる。特に、舞踏会のシーンは印象に残る。また、村での狩りの場面とか、それにつづく音楽の演奏など、かなり理想化したロシア女性として描かれていると感じるところがある。

だが、そのナターシャも、この巻の終わりの方で、あやまちをおかすことになる。なんとも愚かな女であることかと思ってしまう。さて、これから、ナターシャとアンドレイの関係はどうなるのだろうかと気になる。(まあ、この作品を読むのは、何度目かになるので先のことは分かってはいるのだが。)

ここまで描かれているのは、ロシア的としかいいようのない何かなのだろうと思って読む。これは、ドストエフスキーを読んでも感じるところではあるが、ナターシャや、アンドレイの言行など読んでいくと、これがロシアの人びとの思うことなのか……といっても、当時のロシア貴族は、その当時の社会のほんの一握りであったのだろうが……強く印象に残る。

それにしても、貴族だからといっても、必ずしも経済的に裕福であるとは限らない。この小説は、金銭的なことにかなり細かい。貴族の生活も、それなりの生活を維持しようと思うならば、とても大変だったようだ。

さて、彗星が空に出たところで、この巻が終わる。これからのロシアの運命はどうなるのか、ナターシャやアンドレイを始めとする登場人物たちはどうなるのか、楽しみに次の巻を読むことにしたいと思う。

2021年10月15日記

追記 2021年12月11日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年12月11日
『戦争と平和』(四)トルストイ/望月哲男(訳)光文社古典新訳文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/12/11/9447055