「ラストベルト アメリカ 忘れられた人々」2024-12-11


2024年12月11日 當山日出夫

映像の世紀バタフライエフェクト ラストベルト アメリカ 忘れられた人々

今年になってから読んだ本で印象に残っている野が、金成隆一の『ルポ トランプ王国』『ルポ トランプ王国 2』(岩波新書)であり、『記者、ラストベルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂』(朝日新聞出版)である。それから、『ヒルビリーエレジー』『壁の向こうの住人たち』も買ってあるが、これはまだ読んでいない。

私の趣味としては、トランプを支持するという気持ちにはなかなかなれないが、しかし、なぜ、人びとはあれほどまでに熱狂的にトランプ支持なのか、という理由は理解しておくべきだと思う。(強いていえば、これと同じことは、日本の安倍晋三にも、中国の習近平にもいえることだと思うし、次がどうなるか分からないが、韓国の大統領についても、考えなければならないことだと思う。)

ラストベルトといわれる地域に住む、「普通」の人びと……その多くは、白人のブルーカラーになるが、白人だけではなく黒人なども含む……が、どのように暮らしてきて、今の暮らしがどんなふうで、そして、どのようなことを政治に望んでいるのか、その生活の実感こそが重要である。かつて、このような人びとの声を代表するのが民主党だったが、いまでは、すっかり変わってしまっている。番組の中で出てきたケネディの演説は、今のリベラルな価値観につながるものだが、その視野のなかには、労働者の人びとのことがはいっている。(そして、今のアメリカのリベラルは、これを失っている。)

この回の大半は、アメリカの自動車産業と、その労働者たちの労働運動の話しであった。ウォルター・ルーサーという人物のことは、この番組で名前を知った。アメリの政治史のなかで、重要な位置をしめる人物である。

鉄鋼とか自動車とか、もうアメリカの工場で作るようなものではないのかもしれない。もし作るとしても、非常に付加価値の高い高級なものに限られるだろう。これから先、自動車を作ることから、日本とかドイツのメーカが苦境に立たされるだろうか。悲観的に考えれば、トヨタがつぶれるかもしれないが、レクサスは生きのこるということになる。

番組の冒頭で出てきた、ガラス工場のことは印象的である。元のGMの工場で、中国の企業が操業する。賃金は、かつての三分の二であるという。これは、はっきりいって、アメリカのラストベルトの労働力が、中国資本に買いたたかれているということになる。

アメリカのラストベルトのことは、産業構造の変革によるものなので、そう簡単に解決できる問題ではない。しかし、このような人びとの発言力が大きくなっていくことは確かである。

忘れられた人びと……これはアメリカだけの問題ではない。日本においても、また、韓国や中国においても、さらには、ヨーロッパの人びとにおいても、「忘れられた」と感じる人びとが増えてきたとき、どうなるだろうか。そのような人びとを、ただ極右といってラベリングするだけで、そして見下しているだけの、進歩的な立場を自称する人たちこそ、本当の危険要因であるように思えてならない。

2024年12月10日記

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