『隠蔽捜査』今野敏2017-03-17

2017-03-17 當山日出夫

今野敏.『隠蔽捜査』(新潮文庫).新潮社.2008 (新潮社.2005)
http://www.shinchosha.co.jp/book/132153/

警察小説、それも日本のものを読んでおきたくなった。これまで、なぜか手にすることがなかったのであるが(佐々木譲などは読んでいたが)、文庫本で読んでおくことにした。

調べてみると、このシリーズだけの特設HPができている。

http://www.shinchosha.co.jp/topics/police/konno_bin.html

順次、このシリーズを読んで思ったことなど書いてみたいとおもっているが、まずは、第一冊目から。これは、吉川英治文学新人賞の受賞作でもある。

解説にも書いてあるが……なるほど、こういう手がまだのこっていたのかというのが、正直な感想。こんな主人公をよく思いついたものである。

読み始めて、この作品の主人公(竜崎)ぐらい、いやな人物はいない。なにせ、東大出の警察官僚(キャリア)。東大出身者にあらずんば、人にあらず……どうどうと言ってのける。

なんでこんないやなやつと付き合わねばならんのだと思って読んでいくのだが、途中から、この偏屈というか朴念仁というか、この一風変わった主人公に、なんとなく感情移入していってしまう。

キャリアだから、捜査の現場に出ることはない。警察庁で、広報を担当しているという立場。なぞの連続殺人事件。警察官僚ならではの知識で犯人のめぼしをつけるのだが、それにどう対応するか、警察庁(カイシャ)としては、悩むことになる。いや、彼は、彼なりの自分の警察官僚としての正義を貫く。

このミステリの特徴は、

第一に、警察庁のキャリアとして、直接、捜査の現場に出ることはないのだが、全体として、警察小説として、犯罪とその捜査を描くことに成功している。この絶妙の距離感が、実に巧い。

第二に、警察小説の基本にあるのは、警察官としての正義である。何が、警察官の正義なのか。これが、現場の警察官(刑事)であれば、比較的わかりやすく描くことができる。市民感覚でわかるものである。しかし、キャリアのいだく、警察の正義とは何であるのか、これは、市民感覚ではわからないとことがある。それを、この小説は、説得力ある叙述で描ききってみせている。

以上、二点をあげることができるだろうか。

この「隠蔽捜査」シリーズ、第二作『果断』で、日本推理作家協会賞を受賞している。楽しみに読むことにしよう。まあ、実際に、こんなキャリアががいるかどうかという詮索は無駄、野暮というものである。

追記 2017-03-23
この続編については、
やまもも書斎記 2017-03-23
『歌壇 隠蔽捜査2』今野敏
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/03/23/8416674

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