『本居宣長』子安宣邦2018-09-03

2018-09-03 當山日出夫(とうやまひでお)

本居宣長(子安宣邦)


子安宣邦.『本居宣長』(岩波現代文庫).岩波書店.2001(岩波書店.1992 加筆)
https://www.iwanami.co.jp/book/b255689.html

本居宣長を読みたいと思っている。私ももう還暦をとうにすぎた。これから、新規な本を読むよりも、古典を読んで時間をつかいたい。『源氏』『万葉』を、古典として読んでおきたい、そのように強く感じるようになってきている。

今日、〈古典〉を、国語学、国文学という立場から読むとすると、どうしても、国学の伝統、なかでも、本居宣長という存在を避けてとおることはできない。

今年、明治150年ということで、明治維新関係の本を読んでみようかと思い、『夜明け前』(島崎藤村)を読んだ。それから、『本居宣長』(小林秀雄)、『やちまた』(足立巻一)などを読んでみた。

やまもも書斎記 2018年2月23日
『夜明け前』(第一部)(上)島崎藤村
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/02/23/8792791

やまもも書斎記 2018年3月15日
『本居宣長』小林秀雄
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/03/15/8803701

やまもも書斎記 2018年3月19日
『やちまた』足立巻一
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/03/19/8806507

本居宣長は全集(筑摩版)は持っている。その他、思想大系とか、岩波文庫とか、いくつか本がある。本格的に本居宣長について読む前に、今、出ている本で、本居宣長について、その概要を読んでおきたいと思った。小林秀雄の本は読んだ。次に、読んでみようと手にしたのが、子安宣邦の『本居宣長』である。

何故、私は、本居宣長にひかれるのだろう。その学問の目標としたところ、いにしえの心を明らかにするということ、これについては、現代の立場からは、かなり批判的な眼で見るということになっている。学問の究極の目的については、もはや現代において共感するところはないといってよい。

だが、しかし、本居宣長という人物は魅力的である。その没後の門人であり、幕末から明治にかけて多大な影響があった、平田篤胤については、あまり読もうという気はおこらないでいる。(近年、その再評価の動きがあることは承知しているつもりでいるが。)

今の自分をかえりみて、考えることは次の二点。

第一には、その究極のところに共感できないかもしれないが、しかし、その考えたことは、たどってみたいという魅力がある。それは、いにしえの心であり、もののあわれ、である。

とはいえ、今、『古事記』を読んで、そこにいにしえの心を読みとるような読み方は、できない。現代からは、もっと批判的な読み方をすることになる。だが、その宣長の古事記の「よみ」の文献実証主義とでもいうべきものは、今日においても、継承しうるものである。

また、『源氏』などを読んで、〈もののあわれ〉を感じるように読んでみたい、という気持ちがある。無論、現代では、『源氏』のコーパスの利用というようなことも念頭においてということではあるが。

第二には、上記にもふれたことだが、私の学んできた、国語学における文献実証主義という学問的方法論は、宣長が『古事記』などを読んだ方法と、非常に親和性がよい。だからこそ、近代の国語学、国文学という学問分野が、近世の国学の延長線上に位置し得ているということがある。

文献実証主義という方法論を自覚した上で、では宣長が実際にどのように考えてきたのか、たどってみたいという気がしている。

以上の二点が、今、心にうかぶことである。

『本居宣長』(子安宣邦)は、主に『古事記伝』の方法論について論じた本である。『古事記』には古代の正しい清い心が書かれている。それは『古事記』が、古代の正しい清い心の時代に生まれた本だからである。この同語反復的な価値観のなかに、『古事記伝』という偉大な業績がなりたっている。

この本では、特に近代になってからの文献学的な国語学の成立との関係については、言及がない。しかし、今の私の立場から読解してみるならが、近代的な文献実証主義に耐えるもの、あるいは、その出発点、さらには、その到達点としての、『古事記伝』という仕事をイメージすることになる。

『古事記伝』は、自分の目で読んでおきたい本の一つとしてある。

追記 2018-09-10
この続きは、
やまもも書斎記 2018年9月10日
『本居宣長』相良亨
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/09/10/8958519

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