半藤一利『続・漱石先生ぞな、もし』徴兵逃れのこと2016-10-12

2016-10-12 當山日出夫

NHKで、『夏目漱石の妻』をドラマでやっているせいか、漱石関係の本を、手にとったりしている。そのなかの一冊、

半藤一利.『続・漱石先生ぞな、もし』(文春文庫).文藝春秋.1996 (原著、文藝春秋.1993)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167483050

もういまでは売っていなようだ。

この本でちょっと気になって付箋をつけた箇所。漱石が、徴兵をのがれるために、戸籍上の本籍を北海道に移していた件について。このことについて、半藤一利は、つぎのように記している。

「前著(『漱石先生ぞな、もし』)で、記したように、日清戦争がはじまる以前は、なお兵役から免れる手段をとることが国家への反逆となるわけではなかった。徴兵猶予の道をさがすのは通常よく行われていたのである。すなわち福地重孝氏の著書によると、明治十年代には、それを証するような愉快な本が何冊も出版されている。」(p.106)

として、次のような本が記してある。

石井郁太郎『徴兵令――附のがれ法』明治十六年
近藤道治『徴兵免否註解――一名徴兵のがれ早わかり』明治十七年
中野了隋『徴兵心配なし』明治十七年
中井要平『新令・旧令 徴兵免否要覧』明治十七年

これらの本の典拠は、巻末の参考文献によると、

福地重孝『軍国日本の形成』(春秋社)

である。この本の刊行年は、1959らしい。(NDLによる。)

そして、上述のような本はあることは分かったが、読めるかどうか。国会図書館で検索をしてみると、次の本がオンラインで読めることが分かった。著者名で検索してみた。

近藤道治 改正徴兵令註解 : 一名・徴兵のがれ早わかり
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/797776

近藤道治 改正徴兵令免否註解 : 一名・徴兵のがれ早わかり
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/797803

中井要平 現行改正徴兵免否要覧
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/797816

中井要平 新令旧令徴兵免否要覧
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/797867

ともあれ、筆者(半藤一利)のいうとおり、明治のはじめのころまでは、徴兵から逃れることは、別に悪いこととはされていなかったようである。そして、いま、上記のような本は、国立国会図書館デジタルコレクションにはいっていて、オンラインで閲覧することができるようになっている。

たまたま都合でこの順番で書いてみたが、最初に出た『漱石先生ぞな、もし』については、改めて書くつもり。