『純喫茶「一服堂』の四季』東川篤哉2017-04-20

2017-04-20 當山日出夫

東川篤哉.『純喫茶「一服堂」の四季』(講談社文庫).講談社.2017 (講談社.2014)
http://kodanshabunko.com/cafeippukudo/

この本のHPの紹介には、「ユーモア・カフェミステリ」とある。が、この作品は「本格」であると思って読んだ方がいいし、そして、損はない。

文庫本の解説を書いているのは、岡崎琢磨。これを読んで、「ビブリア古書堂の事件手帳」シリーズ(三上延)とか、「喫茶店タレーランの事件簿」シリーズ(岡崎琢磨)などの作品を、ライトミステリというらしい、ということを憶えた。まあ、私も、これらの作品は、一応読んではいるのだが。

しかし、この作品を「ビブリア」とか「タレーラン」のようなシリーズのものと一緒だと思ってはいけない。この作品では、人が死ぬ。起こる事件は、どれも殺人事件である。それもただの殺人ではない、猟奇殺人であり、密室殺人である。

短編集という体裁をとっているので、フーダニットではない。登場人物が限られるので、これははじめから無理。もう、この人物しか犯人はいないであろう、と推測される人間が犯人である。では、その犯人は、なぜ、どのようにして、その犯罪をなしとげたのか、ハウダニットとして読むことになる。

その推理の手順は、まさに「本格」である。そのトリックも、また、推理もあざやかである。なぜ、そのような死体の状況になっているのか、ということと、トリックが密接に関係している。まさに「本格」である。

そして、重要なことは、連作の四つの短編集という体裁をとりながら、全体として、別のトリックがしかけてあること(これ以上は書かない)。

東川篤哉は、そのデビューの時から、読んで来ている。そんなに全部の作品をというわけではないのだが、いくつかの主な作品は読んでいるつもりでいる。これは、これまでの作品からすると、別の独立したシリーズになるが、この続編はないだろうな、とも感じる作りになっている。

それにしても、猟奇殺人、死体切断、密室、よくもこれだけの短編集につめこんだものである。この短編ひとつで、横溝正史なら、長編を軽く書いてしまっているだろう。

他に読んでおきたい本がたまっているのだが、気晴らしにと思って手にした。が、これは、これで非常に上質のミステリに仕上がっている。上質のミステリを読んで時間をすごすほど贅沢はない。久々に充実した時間であった。

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