「宮本常一“忘れられた日本人” (2)伝統社会に秘められた知恵」 ― 2024-06-14
2024年6月14日 當山日出夫
100分de名著 宮本常一“忘れられた日本人” (2)伝統社会に秘められた知恵
若いときに……今から半世紀ほど前のことになるが……『忘れられた日本人』を読んだとき、印象にのこっていることのひとつが村の寄り合いである。村のなかで何か問題があったとき、寄り集まってとことん話し合う。全員一致の結論が出るまで話し合う。
今から半世紀ほど前に読んだのだが、その時の記憶として、これはひとつの民主的なシステムなんだろう、しかし、一方で非常に前近代的、封建的な制度として、否定されることになるだろう、と感じたものである。熟議にちがいないが、ある意味では個人の意見の抑圧にもつながる。
番組のなかで言っていたが、このような社会は一度こわれるともう復活しない。現代では、町内会とか学校のPTAでも、拒否する人が多い。
しかし、その一方で、今の資本主義社会の先に新しいコミュニティの創出の必要ということを熱心に語る人もいる。あるいはタウンミーティングの重要性を説く人もいる。私は、このような議論を目にすると、宮本常一を読んだことがあるのだろうか、と思ってしまう。
たしかに前近代的な封建的な社会ではあるのだが、まったく非合理的ということではない。その社会には、それなりの合理性があってのことであることは、確かなことだろう。だが、それが、そのままこれからの社会のあり方につながるかどうかは、また別の問題ではある。
あるいは、封建的遺制というべき村落共同体のなかに生きる人びとが、かならずしも辛苦のなかで生活していただけではない、ということも重要なことかとも思う。その社会のなかで暮らす人びとの喜怒哀楽があってこその、人間の生活であり歴史なのである。
2024年6月12日記
100分de名著 宮本常一“忘れられた日本人” (2)伝統社会に秘められた知恵
若いときに……今から半世紀ほど前のことになるが……『忘れられた日本人』を読んだとき、印象にのこっていることのひとつが村の寄り合いである。村のなかで何か問題があったとき、寄り集まってとことん話し合う。全員一致の結論が出るまで話し合う。
今から半世紀ほど前に読んだのだが、その時の記憶として、これはひとつの民主的なシステムなんだろう、しかし、一方で非常に前近代的、封建的な制度として、否定されることになるだろう、と感じたものである。熟議にちがいないが、ある意味では個人の意見の抑圧にもつながる。
番組のなかで言っていたが、このような社会は一度こわれるともう復活しない。現代では、町内会とか学校のPTAでも、拒否する人が多い。
しかし、その一方で、今の資本主義社会の先に新しいコミュニティの創出の必要ということを熱心に語る人もいる。あるいはタウンミーティングの重要性を説く人もいる。私は、このような議論を目にすると、宮本常一を読んだことがあるのだろうか、と思ってしまう。
たしかに前近代的な封建的な社会ではあるのだが、まったく非合理的ということではない。その社会には、それなりの合理性があってのことであることは、確かなことだろう。だが、それが、そのままこれからの社会のあり方につながるかどうかは、また別の問題ではある。
あるいは、封建的遺制というべき村落共同体のなかに生きる人びとが、かならずしも辛苦のなかで生活していただけではない、ということも重要なことかとも思う。その社会のなかで暮らす人びとの喜怒哀楽があってこその、人間の生活であり歴史なのである。
2024年6月12日記
「フセイン拘束~捕らえられた独裁者の真実~」 ― 2024-06-14
2024年6月14日 當山日出夫
アナザーストーリーズ フセイン拘束~捕らえられた独裁者の真実~
再放送である。最初の放送は、二〇二二年。
アメリカのイラクでの戦争は失敗だったというのが、一般の認識だろう。サダム・フセインは、大量破壊兵器を持ってはいなかった。そして、サダム・フセインを排除した後のイラク、あるいは、中近東、周辺諸国の政情は不安定さをましている。
印象に残ることがいくつかある。
まず、最初に出てきたアメリカ陸軍の軍人。軍人とはこういうものなのだろう。命じられたことを、着実に実行する。作戦をたてて、その任務が達成できたかどうかについて責任を負う。その任務について、政治的にことの是非はあるにちがいないが、しかし命令にしたがう。こういう不屈の精神こそが、軍人というものだと感じるところがある。テレビの画面では、アーリントン国立墓地が映っていたが、軍人は栄誉をもって遇されるべきである。
CIAが、捕まえたフセインを尋問したのだが、結局、大量破壊兵器はなかったと結論づけざるをえなかった。一方で、各所を徹底的に探して物証が無かったということもあるにちがいないが、フセインという人物を直接尋問することによって、どんな人間なのか、そこにせまっていくには、人と人が直接対面して話しをするしかない。これは、何よりも重要なことだろう。
フセインの愛人とされた女性。フセインという人物もまた人であるということになる。その事跡はたしかに悪であったかもしれない。特に、湾岸戦争の発端となったクェート侵略は、正当化されるものではない。だが、どんな独裁者であっても、人としての顔があることになる。その人間をどう評価するか、という側面もまた重要なことであるのだろう。
世界には、独裁者が多くいる。その圧政のもとで苦しんでいる人びともいる。だが、世界全体の秩序を維持するということを考えると、独裁政権だから強引に倒してもかまわない、ということにはならない……そのような教訓を、イラク戦争の事例から学ぶことができるのだろうか。
また、イラクにおいて政権が国際情勢をどう認識していたのか、また、アメリカにおいてイラクの内情についてどれだけのことをつかんでいたのか、認識の齟齬が不幸を生むということでもある。それぞれの国における国際情勢への認識、また、その国なりの行動原理、というものが、広く国際的な世論のなかで知られるべきということになるのかもしれないのだが、はたしてどうだろうか。
といって、今の中国とかロシアのことを肯定するということにはならないのではあるが。
2024年6月13日記
アナザーストーリーズ フセイン拘束~捕らえられた独裁者の真実~
再放送である。最初の放送は、二〇二二年。
アメリカのイラクでの戦争は失敗だったというのが、一般の認識だろう。サダム・フセインは、大量破壊兵器を持ってはいなかった。そして、サダム・フセインを排除した後のイラク、あるいは、中近東、周辺諸国の政情は不安定さをましている。
印象に残ることがいくつかある。
まず、最初に出てきたアメリカ陸軍の軍人。軍人とはこういうものなのだろう。命じられたことを、着実に実行する。作戦をたてて、その任務が達成できたかどうかについて責任を負う。その任務について、政治的にことの是非はあるにちがいないが、しかし命令にしたがう。こういう不屈の精神こそが、軍人というものだと感じるところがある。テレビの画面では、アーリントン国立墓地が映っていたが、軍人は栄誉をもって遇されるべきである。
CIAが、捕まえたフセインを尋問したのだが、結局、大量破壊兵器はなかったと結論づけざるをえなかった。一方で、各所を徹底的に探して物証が無かったということもあるにちがいないが、フセインという人物を直接尋問することによって、どんな人間なのか、そこにせまっていくには、人と人が直接対面して話しをするしかない。これは、何よりも重要なことだろう。
フセインの愛人とされた女性。フセインという人物もまた人であるということになる。その事跡はたしかに悪であったかもしれない。特に、湾岸戦争の発端となったクェート侵略は、正当化されるものではない。だが、どんな独裁者であっても、人としての顔があることになる。その人間をどう評価するか、という側面もまた重要なことであるのだろう。
世界には、独裁者が多くいる。その圧政のもとで苦しんでいる人びともいる。だが、世界全体の秩序を維持するということを考えると、独裁政権だから強引に倒してもかまわない、ということにはならない……そのような教訓を、イラク戦争の事例から学ぶことができるのだろうか。
また、イラクにおいて政権が国際情勢をどう認識していたのか、また、アメリカにおいてイラクの内情についてどれだけのことをつかんでいたのか、認識の齟齬が不幸を生むということでもある。それぞれの国における国際情勢への認識、また、その国なりの行動原理、というものが、広く国際的な世論のなかで知られるべきということになるのかもしれないのだが、はたしてどうだろうか。
といって、今の中国とかロシアのことを肯定するということにはならないのではあるが。
2024年6月13日記
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