『おしん』あれこれ(その四)2019-06-08

2019-06-08 當山日出夫(とうやまひでお)

続きである。
やまもも書斎記 2019年5月17日
『おしん』あれこれ(その三)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/17/9073429

以前に、再放送の時、『おしん』は全部見ているので、そのさきのことまで知ってはいるのだが、おしんの人生をふりかえって、今……東京で髪結いの仕事で生活しているころ……このころが、一番幸せな時であったかと思う。

東京に出てきて、おしんは、たか(渡辺美佐子)のもとで髪結いの仕事につく。はじめは日本髪を仕事にしようとしていたのだが、たかの考えるところもあって、洋髪の仕事にたずさわるようになる。そこで、カフェに出髪に行って、女給たちと親しくなる。

ここまでの放送でのポイントは、次の二点になるだろうか。

第一は、おしんは、自分の腕で稼いでいくようになるということである。今後、おしんの生活にはさまざまな苦労があるのだが、最終的には、スーパーの経営者、実業家として、成功をおさめることになる。それまで紆余曲折ある。しかし、どのような場合でも、おしんは、基本的に自分の才覚で事業をはじめている。

第二は、おしんのことばである。東京に出てきてすぐのころのことばは、まだ山形方言が強く残っていたが、髪結いとして独り立ちするようになるころには、東京方言を身につけている。これから、日本各地でおしんの人生が展開することになる。このとき、東京で働いて生活して、東京方言を身につけているということが、結局、おしんの仕事にとってプラスになっていくことになる。

実業家として名をなすには、やはり東京方言がふさわしいということになるのだろうか。ともあれ、ここで、おしんが東京方言を話すようになっていることは、これからのドラマの展開にとって、重要な意味をもってくることになると私は思っている。(ドラマの現在のおしん(乙羽信子)は、山形方言ではない。)

以上の二点が、今までの放送を見て、また、以前の再放送を見たときの印象を思い返して、考えることなどである。

時代設定は大正時代である。デモクラシーの時代である。小作農の娘に生まれたおしんが、自分の才覚ひとつで社会の階層をあがっていくストーリーとして、まさに、大正時代がふさわしいといえるのかもしれない。(その後、昭和になり、戦争の時代を生きていくことになるのだが。)

ところで、おしんの名前は「しん」であるようだ。米騒動で警察につかまって、警察官が髪結いのたかのところに来たとき、谷村しん、と言っていた。であるならば、おしんが、自分で自分の名前を名乗るときに、「おしん」と言っているのは、ちょっとおかしいと思うがどうであろうか。人から呼ばれるときは、「お」がついて「おしん」であってもいい。しかし、自分で名乗るときには、「お」はつけないのではないだろうか。

東京に出てきて、たかにあったときも、おしんは自分の名前をきかれて「おしん」と言っていた。が、これも、ドラマのタイトルが、「おしん」ということで、「おしん」という名前を強く印象づけたいための脚本かと理解して見ている。

追記 2019-07-08
この続きは、
やまもも書斎記 2019年7月8日
『おしん』あれこれ(その五)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/07/08/9113472

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/06/08/9082632/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。