3か月でマスターする江戸時代「(6)なぜ立て続けに「改革」した?(1)徳川吉宗〜田沼意次」2025-02-14

2025年2月14日 當山日出夫

3か月でマスターする江戸時代 (6)なぜ立て続けに「改革」した?(1)徳川吉宗〜田沼意次

この回は、吉宗と田沼意次。見ていて、なるほどなあ、と思うところがある一方で、今一つ隔靴掻痒という気がする。それは、前にも書いたことなのだが、江戸時代の幕藩体制は、米作が基本であり、それからの年貢で、すべて動いていた……まあ、たしかにそのとおりなのかとも思うが、これで本当にその時代の経済が回っていたのだろうかと、思ってしまうところにある。

米という穀物の利用価値は、とにかく食べることだけである。お米の御飯を炊いて、それを主食にする。あるいは、一部では、それを原料にしてお酒を造る。しかし、これ以外の利用法はたぶんないだろう。

このとき気になるのは、次のことである。

第一に、全国で、どこでどれぐらいの米が取れたのか。そして、それは、どのように流通して、消費されたのか。江戸時代の人びとは、身分や階層にもよるだろうが、いったい何を食べていたのか。お米を、いちいち江戸や大阪まで運んでいたとしても、その後、その米はどう消費されたのか。換金するとして、お米の流通と、貨幣のシステムは、どのように連動していたのか。

第二に、米が作れない地域、あるいは米作をしない人びとの生活はどのようなものであったのか。たとえば、漁民であったり、山間部に住む人びとであったり、あるいは、旅から旅へと移動する人びとであったり。また、商業従事者は、どのようにして暮らしていたのか。具体的には、どのようにして、お米を買っていたのか。それを、どのように食べていたのか。また、人間はお米の御飯だけを食べては生きていけない。それ以外の食物は、どうだったのだろうか。

お米を基準に考える江戸時代ということになると、どうしても、その流通のシステムが重要であることになるし、同時に、日本の農耕と食文化の歴史、これが密接にからんだ領域のことになる。

どうもこのあたりのことが、すっきりとしないのである。

吉宗を米将軍と称するのは、そうなのだろうが、だからといって、吉宗の時代から日本の人びとの食生活が結果的に米中心になった、というわけではあるまい。米将軍という言い方は、シンボリックに「米」と言っていることになるが、この時代の米とは、どんなものだったのだろうか。上げ米ということがあったとしても、現物のお米を江戸まではこんだのだろうか。そうだとしても、その米は、換金するしかなかったはずである。江戸市中に米があふれた、ということでもないだろう。その米は、誰が食べたと理解すればいいだろうか。米は、食べることしか最終的な利用価値がないものである。

もちろん、上述のようなことを考えるためには、「貨幣とは何か」という、経済学の、あるいは、哲学の、重要な問題があることを、考えなければならないことになる。歴史学者は、「貨幣とは何か」ということについて、どう考えているのだろうか。このことを考えずに、商品経済の発達、などと言っても、たしかにそのとおりだとは思うが、何か本質的なところを見誤っているようにも、思えてならない。

米をタテマエとしたのが江戸時代だったといっていいかもしれないが、それならそれで、実態の経済はどうだったのか、ということが気になるのである。このタテマエの論理の構成が気になるといってもいいだろうか。

おそらく、米をタテマエとしない社会の成立ということが、明治維新ということになるのかもしれない、とは思うところである。たぶん、明治になってからの地租改正、秩禄処分、というあたりの経済的、社会的意味を、考えるところから、さかのぼって江戸時代を見るとどうだったのか、というアプローチもあるかもしれない。近代的な税制度の確立から、それ以前の社会のあり方がどうであったのかを考えることになる。近世と近代の、政治的経済的な連続と不連続を見ることができるだろう。

もし、私が若くて学生だったら自分で勉強してみたいと思うのだが、もうその元気もないので、ただ思うだけである。歴史学の方面では、すでに研究が進んでいることかもしれないけれど。

2025年2月13日記

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