『牧野富太郎自叙伝』牧野富太郎/講談社学術文庫2023-06-03

2023年6月3日 當山日出夫

牧野富太郎自叙伝

牧野富太郎.『牧野富太郎自叙伝』(講談社学術文庫).講談社.2004
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000151235

もとの本は、一九五六(昭和三一)年、長嶋書房。ただ、これ以上の書誌が書いていないのが残念である。読めば分かるが、それ以前に書いた文章を編集したものになる。読むと、内容的にかなり重複した事柄がある。初出の文章をそのまま掲載したものだろうか。

三部に分かれる。
第一部 牧野富太郎自叙伝
第二部 混混録
第三部 父の素顔 牧野鶴代

さて、この本は、先に『牧野富太郎の植物学』(田中伸幸、NHK新書)、『牧野富太郎の植物愛』(大庭秀章、朝日新書)を読んでから読むということにした。そのせいか、かなり批判的な目で読むということにはなった。

やまもも書斎記 2023年5月12日
『牧野富太郎の植物学』田中伸幸/NHK新書
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2023/05/12/9585310

やまもも書斎記 2023年5月13日
『牧野富太郎の植物愛』大庭秀章/朝日新書
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2023/05/13/9585612

牧野富太郎は、東京大学に職を得たとは言っても、基本的に在野の人であり、独学の人である。そのことが別に悪いことではないのだが、そのような経歴の人にあることだと思うが、かなりの自信家であり、場合によっては独善的でもある。特に、東京大学に職を得たときのこととか、それを離れることになったときのことなど、はたしてどこまで信用していいものなのか、判断に迷うところがある。このあたり、牧野富太郎についての史料としては、あつかいに非常に注意を要するところになるだろう。

とはいえ、全体として、非常に読みやすく、面白い。波瀾万丈の人生であり、なみはずれた植物への愛は、時として異常とも感じられるほどである。が、読んで、とにかく牧野富太郎は植物が好きで好きでたまらない人間であることが、よく伝わってくる。

これはこれとして、読み物として面白く、また、近代の大学の学問についての一つの歴史の証言になっていると感じるところがある。

2023年5月10日記

映像の世紀バタフライエフェクト「独ソ戦 地獄の戦場」2023-06-03

2023年6月3日 當山日出夫

※少し前に書いておいた文章なのだが、削除してしまうのはもったいない気がするので、掲載しておく。これまで、ブログは、一日に一つという原則できたのだが、無理にこれにこだわる必要もないかと思うようになった。

映像の世紀バタフライエフェクト 独ソ戦 地獄の戦場

これまでの「映像の世紀」シリーズは、ほとんど見ているはずだが、この回は、基本的に新しい映像資料で作ってあったようだ。(これまで使ったものの記憶はほとんどなかったと思う。)

かつての独ソ戦のことを、現在のウクライナのことに安易にあてはめるのは、私は、ためらわれるのだが、しかし、ロシアとしては、昔の独ソ戦、大祖国戦争を戦った記憶が、民族と国家の記憶の根底にあることは、理解しておく必要があるだろう。ただ、現代の価値観だけで、その意味を問うても説得力に欠けることになる。

ところで、独ソ戦のことが一般に知られるようになったのは、やはり、岩波新書の『独ソ戦』(大木毅)の存在が大きいと思う。この本は、私も読んだ。たぶん、軍事史の専門家にとっては、独ソ戦というのはきわめて馴染みのある研究課題であるのだろうと思う。

それにしても、戦争を始めるのも終わらせるのも、政治的判断であると思う。軍としての軍事的合理性だけでは、あのような惨禍はありえなかったにちがいない。

また思うこととしては、歴史の「もし」であるが……日本が、あと半年、日米開戦を遅らせることができたら、独ソ戦におけるモスクワ攻防の結果が分かっていたら、はたして、歴史はどうだっただろうか。

2023年5月23日記