ETV特集「森崎和江 終わりのない旅」 ― 2024-01-07
2024年1月7日 當山日出夫
ETV特集 森崎和江 終わりのない旅
録画してあったのを年末になって見た。
『からゆきさん』が刊行になったのは、高校生のころだったろうか。これを実際に読んだのは、大学生になってから文庫本になったものを読んだかと憶えている。
番組では語っていなかったことで気になるのは、森崎和江は、どのような経緯で左翼的な思想を身につけていったのか、ということである。まあ、時代の雰囲気としては、左翼思想は流行の考え方であったろうから、どこかで影響を受けているということなのかとも思う。
語られていた範囲では、その思想は、反近代ということであり、反権力、反国家、反男性……というようになる。とはいえ、今日のフェミニズムということでもないと感じる。
単一の共同体の幻想性ということであるが、だが、それで近代を超えるということにつながるかどうかは、私には判断できない。日本の近代を否定的に見る視点はいいとしても、だからといって江戸時代の人びとの暮らしに戻ることもできない。近代を超えるとなると、近代的な国家のシステムに対抗する新たな共同体の形成ということになるのかとも思うが、これもまた幻想にはちがない。
番組の趣旨とはずれるかもしれないが、朝鮮や台湾で生まれた、いわゆる日本人は多くいる。その人びとは、それぞれにどのような思いで、その後の人生をすごすことになったのか、このあたりのことは、改めて研究の必要があるだろう。このなかには、日本で生まれた朝鮮人とか、中国、台湾の人びとなどもふくめて考えなければならないだろう。
朝鮮で生まれ育ったことを原罪としてとらえる感性は、貴重なものかもしれないが、これをつきつめていくならば、近代に生まれた人間は、全員がなにがしかの原罪をせおっていることになる。また、朝鮮の人びとは、植民地支配の被害者であるが故に、無垢ということになるのか、このあたりのことがなんとなくひっかかる。
森崎和江が旅のはてにもとめたアイデンティティもまた幻想であろう。人間というものは、なにがしか幻想のなかにしか生きられないものであるとするならば、これもまた一つの人間観、人間のあり方だと思う。
2023年12月31日記
ETV特集 森崎和江 終わりのない旅
録画してあったのを年末になって見た。
『からゆきさん』が刊行になったのは、高校生のころだったろうか。これを実際に読んだのは、大学生になってから文庫本になったものを読んだかと憶えている。
番組では語っていなかったことで気になるのは、森崎和江は、どのような経緯で左翼的な思想を身につけていったのか、ということである。まあ、時代の雰囲気としては、左翼思想は流行の考え方であったろうから、どこかで影響を受けているということなのかとも思う。
語られていた範囲では、その思想は、反近代ということであり、反権力、反国家、反男性……というようになる。とはいえ、今日のフェミニズムということでもないと感じる。
単一の共同体の幻想性ということであるが、だが、それで近代を超えるということにつながるかどうかは、私には判断できない。日本の近代を否定的に見る視点はいいとしても、だからといって江戸時代の人びとの暮らしに戻ることもできない。近代を超えるとなると、近代的な国家のシステムに対抗する新たな共同体の形成ということになるのかとも思うが、これもまた幻想にはちがない。
番組の趣旨とはずれるかもしれないが、朝鮮や台湾で生まれた、いわゆる日本人は多くいる。その人びとは、それぞれにどのような思いで、その後の人生をすごすことになったのか、このあたりのことは、改めて研究の必要があるだろう。このなかには、日本で生まれた朝鮮人とか、中国、台湾の人びとなどもふくめて考えなければならないだろう。
朝鮮で生まれ育ったことを原罪としてとらえる感性は、貴重なものかもしれないが、これをつきつめていくならば、近代に生まれた人間は、全員がなにがしかの原罪をせおっていることになる。また、朝鮮の人びとは、植民地支配の被害者であるが故に、無垢ということになるのか、このあたりのことがなんとなくひっかかる。
森崎和江が旅のはてにもとめたアイデンティティもまた幻想であろう。人間というものは、なにがしか幻想のなかにしか生きられないものであるとするならば、これもまた一つの人間観、人間のあり方だと思う。
2023年12月31日記
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