英雄たちの選択「幕末の冒険者・ジョン万次郎」 ― 2024-01-24
2024年1月24日 當山日出夫
英雄たちの選択 幕末の冒険者・ジョン万次郎
ジョン万次郎については、とおり一編の知識しか持っていなかった。名前を覚えたのは学校の教科書だったろうか。それから、幕末を描いたドラマなどでは時々登場してくる。近年では、朝ドラの『らんまん』で出てきていたし、ちょっと前の大河ドラマの『西郷どん』にも登場していた。
その当時のアメリカの捕鯨の様子については、メルヴィルの『白鯨』に詳しく描かれている。これを読んだとき、捕鯨の目的が油を取るためであって、肉とかではなかったことに、驚いたことがある。かなり以前のことである。また、『白鯨』の船の航路も興味深い。アメリカ西海岸から太平洋を渡っているのではない。東海岸から大西洋を渡り、インド洋を通って太平洋に出ている。
ジョン万次郎がアメリカの捕鯨船に助けられてアメリカに渡った航路も、『白鯨』の航路と同じと言っていいだろう。ただ、万次郎は、ハワイに行くことになる。しかし、そこからアメリカの西海岸には行っていない。
この航路は、ペリーが日本にやってきた航路でもある。
ジョン万次郎がアメリカで教育を受けたことは知っていたが、その後、捕鯨船の乗組員をしたり、さらには、ゴールドラッシュで金もうけをしていたというのも、興味深い。その資金をもとに、日本に帰国することになった。
帰国の航路は、西海岸からハワイにわたり、そこから琉球をめざすというものだった。
ジョン万次郎は、幕末から明治にかけての重要な人物ということになる。幕府はアメリカについて、万次郎から情報を得ることになる。
明治以降のことについては、番組ではあまり触れられていなかったが、最後まで冒険者であり、行動する人であったことになる。
ところで、この「英雄たちの選択」で面白いのは、歴史上の事跡を解説・紹介するだけではなく、それについての出演者たちの雑談というべき部分である。アメリカと日本の文化の違い、その両方にかかわることになった人間のアイデンティティーがどうであるのか、このようなことについての議論は、これはこれとして面白かった。
あるいは、ジョン万次郎が日本に帰国せずに、アメリカに留まっていたら別の活躍の道が開けることになったのかもしれないということは、考えるべきだろう。
磯田道史が言っていた、昭和の一桁のころの土佐の地方の話し。洋服を着ていただけで、異人と言われたらしい。日本も、昭和のはじめごろまでの地方に生活する人びとの感覚とは、そんなものだったのかもしれない。
また、二世の経営者・政治家について、実際に自分で経験することなく、聞きかじっただけで分かった気になってしまうことの問題を言っていた。
人が字を憶えるとナショナリストになる……これは、近代におけるナショナリズムを考えるうえで、面白い指摘かと思う。
日本に写真をもたらした先駆者であったということも面白い。
外国に出自がある人であっても、アメリカでは大統領以外のなんにでもなれる。たしかにそのとおりかもしれないが、そこには厳然たる格差社会と激烈な競争があることになる。
番組で映っていた、水戸の斉昭の書状が印象に残る。こういう字を書く人だったのかと、改めて感じ入ったところがある。
2024年1月19日記
英雄たちの選択 幕末の冒険者・ジョン万次郎
ジョン万次郎については、とおり一編の知識しか持っていなかった。名前を覚えたのは学校の教科書だったろうか。それから、幕末を描いたドラマなどでは時々登場してくる。近年では、朝ドラの『らんまん』で出てきていたし、ちょっと前の大河ドラマの『西郷どん』にも登場していた。
その当時のアメリカの捕鯨の様子については、メルヴィルの『白鯨』に詳しく描かれている。これを読んだとき、捕鯨の目的が油を取るためであって、肉とかではなかったことに、驚いたことがある。かなり以前のことである。また、『白鯨』の船の航路も興味深い。アメリカ西海岸から太平洋を渡っているのではない。東海岸から大西洋を渡り、インド洋を通って太平洋に出ている。
ジョン万次郎がアメリカの捕鯨船に助けられてアメリカに渡った航路も、『白鯨』の航路と同じと言っていいだろう。ただ、万次郎は、ハワイに行くことになる。しかし、そこからアメリカの西海岸には行っていない。
この航路は、ペリーが日本にやってきた航路でもある。
ジョン万次郎がアメリカで教育を受けたことは知っていたが、その後、捕鯨船の乗組員をしたり、さらには、ゴールドラッシュで金もうけをしていたというのも、興味深い。その資金をもとに、日本に帰国することになった。
帰国の航路は、西海岸からハワイにわたり、そこから琉球をめざすというものだった。
ジョン万次郎は、幕末から明治にかけての重要な人物ということになる。幕府はアメリカについて、万次郎から情報を得ることになる。
明治以降のことについては、番組ではあまり触れられていなかったが、最後まで冒険者であり、行動する人であったことになる。
ところで、この「英雄たちの選択」で面白いのは、歴史上の事跡を解説・紹介するだけではなく、それについての出演者たちの雑談というべき部分である。アメリカと日本の文化の違い、その両方にかかわることになった人間のアイデンティティーがどうであるのか、このようなことについての議論は、これはこれとして面白かった。
あるいは、ジョン万次郎が日本に帰国せずに、アメリカに留まっていたら別の活躍の道が開けることになったのかもしれないということは、考えるべきだろう。
磯田道史が言っていた、昭和の一桁のころの土佐の地方の話し。洋服を着ていただけで、異人と言われたらしい。日本も、昭和のはじめごろまでの地方に生活する人びとの感覚とは、そんなものだったのかもしれない。
また、二世の経営者・政治家について、実際に自分で経験することなく、聞きかじっただけで分かった気になってしまうことの問題を言っていた。
人が字を憶えるとナショナリストになる……これは、近代におけるナショナリズムを考えるうえで、面白い指摘かと思う。
日本に写真をもたらした先駆者であったということも面白い。
外国に出自がある人であっても、アメリカでは大統領以外のなんにでもなれる。たしかにそのとおりかもしれないが、そこには厳然たる格差社会と激烈な競争があることになる。
番組で映っていた、水戸の斉昭の書状が印象に残る。こういう字を書く人だったのかと、改めて感じ入ったところがある。
2024年1月19日記
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