『さらば長き眠り』 ― 2008-03-18
2008/03/18 當山日出夫
原尞の作品、『愚か者死すべし』を早川書房が文庫化した。となると、どうしても読んでしまう。そうすると、最初にもどって、『そして夜は甦る』『私が殺した少女』『天使たちの探偵』『さらば長き眠り』と、順番に再読することになる。文庫本が出るたびにこれを繰り返す。別に文庫本が出なくても読み返すのだが。
ま、ともあれ、やっと『さらば長き眠り』(文庫本)まで、読み終えた。
個人的には、ハードボイルドよりも、ピーター・ロビンソンとか、エリザベス・ジョージ、などの作品が好きなのだが……ミステリ中毒といっても、やはり好きな作品にはかたよりがある。
個人的偏見として断定しよう……「本格」を論じるなら、仁木悦子、をまず読まねばならない、と。そして、仁木悦子のもう一つの個人的な側面についても……学校教育を受けていないこと、車いすでの生活、かがり火の会のこと、など。そのうえで、仁木兄妹シリーズと、三影潤シリーズ、のこと。
で、原尞にもどれば、やはり、これだけの作品になると、時間の流れを感じる。『そして夜は甦る』では、10円硬貨で電話がかけられないこと(テレフォンカード)に不満あった、探偵(沢崎)が、『愚か者死すべし』では、携帯電話をつかうようになっている。このような、風俗的な部分で時の変化を感じはするものの、作品そのものに古さを感じることはない。このあたりが、ハードボイルドとしての本質なのであろう。
ついでに、ミステリについて言えば、今、検索をしてみたら、名著『ミステリーの社会学』(高橋哲雄、中公新書)が、本屋さんで買えなくなっている。ミステリについて論じるとき、まず読まねばならない本である。毎年、12月になって、「このミス」に狂奔する日本の出版業界の見識の浅薄さを感じずにはいられない。本当に『ミステリーの社会学』(高橋哲雄)への需要が無いのか、中央公論新社が無理解なだけなのか。
當山日出夫(とうやまひでお)
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