学術書出版とDTP(2) ― 2008-11-14
2008/11/14 當山日出夫
今、私の手元にある本。
『Wordで本をつくろう ヨコ組編』『Wordで本をつくろう タテ組編』の2冊。ともに、日本エディタースクール。2003年の刊行。
そして、裏表紙には、「この本も本文はWordで作成しました」とある。このなかには、ノンブル(頁番号)や、柱、なども含む。さらに、「2行取り中央」というような、出版印刷業界用語なども出てくるし、その設定法も解説してある。
これは、Word2003版である。したがって、今の2007版に、直接むすびつくというわけではない。(特に、うっかり、メイリオなど使ってしまうと、困る。)
この他にも、Wordで、組版までやってしまおう、という類の本は、いくつか出版されている。
やる気さえあれば、個人レベルで、組版までできてしまう。そして、今は、それを、フォント埋め込みPDFとして、出力できる。それを、出版社に送れば、本を作るコストの、幾分かは、安くできるだろう。
出版不況といわれる。編集・組版・印刷・製本、そして、出版社・書店、どれも景気がいいという話しはきかない。少部数の学術書出版、小規模になれば、実売部数が、200~300、ぐらい。買うのは、その分野の専門の研究者、でなければ、図書館や大学の研究室など。
万年筆と原稿用紙の時代。鉛の活字、あるいは、写植。まさに、活版印刷における「文選(ぶんせん)」があった時代。
パソコンで原稿を書く時代。プレーンなテキストファイルでわたせば、出版社の方で処理してくれる。
そして、今は、組版まで自分で作れる。
最終的に、本として、どうするか、編集や装丁など。これは、やはり、出版社の仕事。
このように考えると、原稿執筆から、本の完成まで、ワークフローが大きく変化してきたことがわかる。いや、少なくとも、変化の基盤は構築されている。この変化に対して、特に学術書の出版社、研究者(著者)、おいついていっていないのが、現状かもしれない。
いまだに、論文の執筆要項で、何字以内で、とか、400字詰原稿用紙で何枚以内で、とかある。このようにいわれても、直感的わからなくなってきている。電卓をとりだして、計算して、1行に何字で、1ページに何行、それで、何ページ、という数値を出さないと、分量の見当がつかない。
どうせ、ほとんどの人がワープロで原稿を書く時代、字数指定のついでに、A4用紙で、40字40行で何枚、とちょっとだけ書いておいてくれると、助かる。
出版の新しいワークフローが出来ているのに、なんとなく、対応がバラバラで、全体に、次のステージへと進めないでいるような印象を持つ。
當山日出夫(とうやまひでお)
コメント
_ おがたかつひろ ― 2008-11-14 14時08分22秒
_ 伊藤信哉 ― 2008-11-17 22時10分34秒
「やる気さえあれば、個人レベルで、組版までできてしまう」のは、まさに御説の通りで、ここ数年のDTP環境の進展は目を見張るものがあります。
私自身も今年、出版社の協力を得ながら、すべての組版を自分で行つた学術的な書誌を1冊、公刊しました。
http://www.s-ito.jp/gaikojiho/
正確には本扉のみ、出版社が作成しましたが、あとは目次や奥付などの組版も、総て自分でやつてます。
細かい数字は不明ですが、組版コストの削減で、それなりの制作費の節減にはなつた模様です。
また自分で組版をすることで、校正作業の手間も省かれました(自分で組んで、そのまま校正する)ので、その点でのメリットもありました。
ただ商業出版ベースとなると、ワードではやはり厳しいかと。またフォントのクオリティも問題になりますので、Adobe InDesignと、OpenTypeベースのそれなりの品質のフォントを、自分で調達する必要がありさうです。
さらに、InDesignの習得にそれなりの労力がかかりますので、そのあたりが壁になる可能性が高さうです。
(そんな暇があれば、別の論文を書いたほうがマシ、となります)
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