『ひよっこ』あれこれ「響け若人の歌」2017-05-14

2017-05-14 當山日出夫(とうやまひでお)

ひよっこ
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/index.html

ひよっこ 第6週 響け若人のうた
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/story/06/

今週は、みね子が東京の向島電機ではたらきはじめて、しばらくたったところ。見どころは毎日それぞれにあるが、気になっていることをいくつか。

第一は、やはりコーラスだろう。乙女寮に合唱部がある。そこに、自主的に、というか、半強制的に、入らされる。このあたりは、さらりと描いてあった。ともあれ、みね子にとって、みんなと歌うことは楽しいらしい。

ただ、実際にうたっているのは、登場人物たちではない。影武者(あまちゃん)である。とはいえ、登場した歌は、私も耳におぼえている。

印象的だったのは、「トロイカ」。ロシア民謡である。ナレーションで、ロシア民謡が日本ではやったのは、シベリア抑留の影響と説明があったのが、やはり時代を感じさせる。そのロシア民謡「トロイカ」は、子どものころによく耳にしたものである。ああ、子どものころによくこの曲を耳にしたなあ、と思いながら見ていた。

第二は、みね子たちの会社での生活。みんなで一緒に近所の銭湯に行って、1本15円のラムネを、三人でわけて飲む。そして、歌をうたいながら帰る。帰り道で歌っていた歌は、「見上げてごらん夜の星を」(坂本九)であった。

また、はじめての給料日。みね子は、もらった給料のほとんどを、故郷に送金してしまう。手元にはほとんど残らない。欲しいと思った服もかえない。そこに、故郷の母が手作りのブラウスをおくってくれる。

いかにも、という展開ではあるが、しかし、しんみりと心に染み入る描写であったと思う。

第三に、すずふり亭。母が送ってくれたブラウスを着て、みね子は赤坂のすずふり亭をたずねる。手には、父ののこしていったマッチ箱。

月1000円で生活しなければならないみね子にとって、すずふり亭はちょっと高い。手頃なところで、ビーフコロッケを注文していた。その味はどんなだったろうか。茨城の田舎から東京に出てきて、初めての給料をもらって、赤坂の街にでかけて食べた洋食の味である。

よかったのは、そのようなみね子をあたたかく見守っている、すずふり亭のひとたち。鈴子(宮本信子)をはじめ、すずふり亭のひとたちは、みね子を大事に思っていてくれるようだ。

これから、このすずふり亭は、ふかくドラマに関わっていくことになるのだろう。今のところ、いい人たちばかりという感じなので、安心して見ていられる。

以上の三点ぐらいが、印象にのこっているところか。

それから、最初の方でできた、故郷のおじさん。犬をつれていた。この空は、ビートルズのいるリバプールにつながっていると叫んでいた。自由をもとめている。東京で暮らし始めたみね子は、楽しく寮生活をおくっているとはいえ、自由からは、まだとおいように感じる。これから、みね子が、どのような自由な世界で生きていくのか気になるところ。

また、今週も、通奏低音のように、父の失踪が描かれていた。父の消息がわかりかけて安堵するみね子。だが、その心中は複雑なようだ。このまま父がみつからないでいてくれればとも、思ったりする。このような屈折した父への思いと、東京での寮生活、これらが、うまく描かれていたように感じたのであった。