『ARG』325号 ― 2008-06-02
2008/06/02 當山日出夫
ARGの325号について、いささか。
編集後記の、学会発表・プレゼンテーションについての、前号(324)の記述といい、今回の、それへのトラックバックの紹介といい、やはり、私なりに考えをまとめておかねばならないだろう。
ARG編集日誌
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080525/1211727053
また、次のブログの内容は参考になる。
かたつむりは電子図書館の夢をみるか、2008-05-26
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20080526/1211820221
ところで、パワーポイントを使わない発表というのもある。特に、私の専門領域にかかわる日本語学・日本文学関係では、そうである。(といって、すべての、学会・研究会に出ているわけではないのだが。)
私の感ずるところ、やはり、まだ、コンピュータそのものに対する、一種の忌避的な感情があると、なんとなく感じる。せいぜい、発表のレジュメを、ワープロで作成するぐらいで、それ以上は、踏み込もうとしない。
これが、パワーポイントになると……かなりの違和感を抱いているようである。
先日の訓点語学会、7名の発表者のうち、まともにパワーポイントを自らつかったのは、1名だけ。(ほぼ、私と同年配の研究者)。
古典籍の研究であるならば、資料(たとえ、それが、影印複製本のスキャナ画像であっても)を、見ながら、話しをするというのが、基本であろう。そして、その技術的な壁は、限りなく低くなっている。スキャナは、安いのであれば、1万円程度、パワーポイントはパソコンを買ったとき、オフィスに一緒についてくる。複雑なアニメーションに凝らなくても、資料の画像を、一緒に発表会場で見ながら自分の話をする、という発想が必要であると、私は考える。
先日の、日本語学会での、漢字のシンポジウム。「漢字」という、まさに、人間が目で見て認識する文字である。そのシンポジウムで、パワーポイントを使って、視覚的に確認しながら、プレゼンテーションする、ということが、どれほど重要か、簡単にわかりそうなものである。(このシンポジウム、パワーポイントを使ったのは、安岡孝一さんだけ、であった。)
ついでに言うならば、新常用漢字の委員会、実際に資料画像(活字・手書き)、あるいは、旧XPと、新VISTAで表示の文字、これらを、パワーポイントで、プロジェクタで見ながら、審議しているのだろうか。字体・字形を議論するなら、絶対に必要である。それが出来ないようなら、少なくとも、この発想が理解できないなら、委員に名をつらねる資格そのものが、疑われよう。
もとにもどって、先日の、CH78(立命館)、個人的印象としては、プレゼンテーションに工夫があり、また、発表に意欲を感じたのは、最初の2件の発表(同志社の大学院生たち)。他には、吉村ミツさん、山田奨治さん、中村美奈子さん、小沢一雅さん、この人たちは、やはり、上手であると感じる。時間も、基本的に守っている。
とにかく、この発表の限られた時間内(20~30分程度)で、これだけは確実に伝えたい、という意識が明瞭である。これは、プレゼンテーションの巧拙以前の、意欲・気持ちの持ち方の問題として。
まず、この発表で自分は何を集まった人たちに伝えたいのか、これが自分自身で把握できていなようでは、プレゼンテーションのテクニック以前の問題である。
當山日出夫(とうやまひでお)
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